日産 リーフ|災害時に力を発揮する“電気自動車の凄さ”

台風21号による車両トラブル最多はタイヤのパンク!

停電被害に苦しむ地域で活躍した次世代自動車

特に筆者が住む千葉県では、最大50m/sを超える強風によって、無数の木々が倒れ、看板をへし折り、屋根瓦を吹き飛ばした。その結果、同年9月9日のピーク時には、千葉県内で最大約64万件が停電し多くの地域で断水が発生。

特に被害の大きかった県南部の地域では、停電発生から2週間以上経ってもライフラインが復旧せず、住民は電気も水もない不便な生活を余儀なくされた。

想定を上回る被害によって思うように復旧が進まない中、自動車メーカー各社が電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHV)、燃料電池車(FCV)を福祉施設や公共施設などに派遣し支援活動を実施。

今回の台風15号の被害を目の当たりにした筆者としては、これらの内燃機関に頼らない次世代自動車は、エコやCO2削減だけでなく、災害時には“動く蓄電池”として頼もしい存在であると改めて認識した。

日産 リーフeプラスなら一般家庭4日分の電気を賄える

日産 リーフ「e+」(イープラス)[62kWh版] エクステリア

千葉県に派遣されたEV(電動車)の中で、もっとも多く派遣されたのが日産 リーフと言われている。2019年1月に追加発売された、リーフeプラスのバッテリー容量は62kWhで、ノーマルバージョンは40kWh。

本来、MOTA的にはモーターの出力がどうだの、航続距離がウンヌンとなるところだが、今回は、停電時に役立つ“動く蓄電池”としての部分にフォーカスしてみたいと思う。

停電などの災害時に、実際リーフがどれだけ使えるのか気になる方も多いと思うが、一般家庭での1日辺りの使用電力を12kWhとした場合、日産の発表ではリーフeプラスのバッテリー容量は約4日分に相当するという。

ホンダ 蓄電池

もちろん季節や気温、家族構成などによって違いは出るものの、家族全員のスマホを充電したり、夜間に必要最小限の明かりを確保したりする程度であれば、どんな家庭でも数日間賄える。

最近では数万円台で販売されるポータブルバッテリーも増えてきているが、使用できるワット数が低く、すべての家電で使えるわけではないため、冷蔵庫や冷暖房を使いたいのならば、リーフなどのEVや家庭用蓄電池でなければならないのだ。

災害時だけじゃなく“卒FIT”の強い味方

日産「リーフ e+」(イープラス) 発表会の模様[2019年1月9日/会場:日産グローバル本社ギャラリー(神奈川県横浜市)]

昨今、家庭用蓄電池が注目されるようになった背景には、固定価格買取制度(FIT制度)の終了、いわゆる“卒FIT”がある。このFITとは、家に設置した太陽光パネルによって発電した電力を、一定の価格で販売(買取)できる制度で、2019年11月より順次終了することになっており、これまでの買取価格から大幅に安くなってしまう。

リュース蓄電池

そこで太陽光パネルで発電した電気を蓄電池に溜め、夜間に使用するという方法を選ぶ方も増えているらしい。だが、家庭用蓄電池は安いものでも100万円前後からと高額で、そう簡単に一般家庭で導入できるものではない。

つまり災害時だけでなく、車としてリーフを使わない時には、日々の生活を支える蓄電池として活用するというのも十分アリなのではないだろうか。

動く蓄電池として活用するには専用のシステムが必要

トヨタ プリウス PHV 一部改良 車に蓄えた電気を住宅に供給する「V2H」イメージ

災害時だけでなく、日常生活においても電気を上手に使うために大活躍するリーフ。だが、動く蓄電池としてリーフをフル活用するためには、それなりの設備が必要であることも覚えておかねばならない。

トヨタ プリウスPHVや三菱 アウトランダーPHEVなどには、1500Wのアクセサリーコンセントがあるが、リーフにはない。したがって、コンセントを使用する家電を気軽に車内で使うことができないのだ。

もちろん1500W使えると言っても、アクセサリーコンセントで家庭の電気を賄うことはできないし、リーフに比べればPHEV車はバッテリー容量自体が少ない。一方、大容量のバッテリーを持つリーフで家庭の電気を賄う場合は、V2H(Vehicle to Home)という専用機器を自宅に設置しなければならない。いわゆるこのV2H機器の設置には当然費用が掛かる。機器の価格も数十万円から100万円程度と幅がある。なお今回の大規模停電エリアでは、移動式のV2L(Vehicle to Load)、いわゆるEVパワーコンディショナー(可搬型外部給電器)と呼ばれる業務用機器が大活躍していた。

なお家庭用の場合には、太陽光発電システムの有無や、電気の使い方などによって、その家庭ごとに適した機器は異なるため、導入する場合は、費用対効果も含め十分に検討したいところだ。

[筆者:増田 真吾]

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