市の花守り半世紀 横須賀、天神島臨海自然教育園

 横須賀、三浦市の花ハマユウ(ハマオモト)が自生し、自然分布の北限とされる天神島(横須賀市佐島)。周辺の環境保全に努めてきた臨海自然教育園が、ことし開設50年を迎える。その沿革は、温暖な海岸特有の動植物に恵まれた景勝地をリゾート開発などから守り、貴重な浜辺の自然を残してきた歴史でもある。

 1周約1キロの小島は三浦半島の西海岸、小田和湾の付け根にあり、湾内外の影響を受けた動植物が共存。島内の天満宮が地域住民らの信仰を集めることで人の手が入りにくく、海岸線から中心部の豊かな緑まで、遮ることのないひと続きの自然が残る。

 市自然・人文博物館(同市深田台)によると、熱帯や亜熱帯に多いハマユウが半島内で自生するのは同島のみ。ほかに50種の植物や100種の海藻、450種の小動物・昆虫などが見られる海岸動植物の宝庫だ。

 保全の取り組みは1953年、同島のハマユウが県の天然記念物に指定されて始まった。市などの後押しで65年には同島や周辺海域(約54万平方メートル)が県の名勝と天然記念物の両方に初指定。市は66年、島内に教育園を置き専門の職員らが管理してきた。

 保護地域内では、海水浴やバーベキューなどのレジャーや、魚介類・海藻の持ち帰りを禁止。島内の一部に柵を設けて立ち入りを規制してきた。同博物館の萩原清司学芸員は「これだけの景勝地なので、保全されていなければリゾート開発の影響を受けていたかもしれない。当時の関係者に先見の明があった」と話す。

 四季折々で異なる表情をみせる同島。14年度の教育園来館者は約4万5千人で、ハマユウが開花する6月下旬以降は磯遊びや自然観察を楽しむ人が多い。相模湾の先に富士山や伊豆大島を望み、冬場は多くの海鳥も飛来する。

 市は開園半世紀の節目に合わせて巡回展示などを行い、市民らに豊かな自然を再認識してもらう計画だ。萩原さんは「時代とともに希少価値は高まっており、来館者が増える可能性もある。正しい情報発信を続けて保全に努めていきたい」としている。

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