9月も終わり、季節はすっかり秋になった。
平成8年生まれの私は23になり、今年の誕生日はキャンティと、東京プリンスのカラオケルームで祝ってもらった。
イカした仲間たちのおかげで、相変わらず時代に見合わない最高に “トレンディ” な日々を送らせてもらってるわけだけど、参考になるものといえば、当時のトレンディドラマと、両親ほどの年の人たちから聞く思い出話くらいだ。
そうしたかすかな時代の空気感を繋ぎ合せて、私たちなりの “昭和” を紡ぎ出してるのだけど、やっぱり、季節柄このコラムで “トレンディドラマ” を紹介するとしたら、『男女7人秋物語』の話になるだろう。
明石家さんまと大竹しのぶが結婚することになるのはこの後の出来事である。この撮影をしていた頃の大竹しのぶは、最初の夫、服部晴治と死別して3ヶ月後であった。
しのぶは眠れない夜に何度もさんまに電話をかけて、夜中まで話を聞いてもらっていた、というエピソードを聞いたことがあるけれど、あの多忙なお笑い怪獣が、しのぶのために寝る時間も削って、電話をしている様子を思い浮かべると、なんともいじらしい気持ちになる。
さんま、しのぶのプライベートのエピソードをここで挙げているとなかなかドラマの話に入らないので、このくらいにしておくけれど、私たちはあの(元)夫婦を、眺めながらもう30年以上も良介と桃子のスピンオフを見せてもらっているような気がする。
さて、この『秋物語』で、特筆すべきなのは、やはり岩崎宏美が女優としてレギュラーで出演しているということであろう。
彼女が演じる美樹は、両親が営んでいた釣り漁船店を継いで経営している、さっぱりとした女。良介と恋仲になるも、最後は桃子に譲ることになる二番手キャラである。
私は男女問わず、二番手キャラや当て馬役に弱いので、今回も例に違わず、美樹の姿に魅せられてしまった。
「私はあなたなんかより、ずっと今井さんが好きだった!アメリカ行ってすぐに男の人作るあなたなんかより、私はずっと今井さんが好きだった!」
というセリフが、どれほど痛かったことか……。しかしこれぞトレンディドラマであり、名場面にふさわしい。
最後に良介を送り出す時の、船の上での笑顔の敬礼。
精いっぱいの “好き” を隠した、その演技は、さすが表現者 岩崎宏美、と言わずして何と言う。
だけど、そんな美樹の想いも超えてしまう、良介と桃子の恋。周りにいっぱい迷惑かけても、何度離れても、出会ってしまう2人。
最近の恋愛ドラマといえば、奥手で…… とか、恋愛に疲れて…… とか、一途さが心を開いて…… とかが多いけれど、このドラマの男女は、平気で別れたり、別の人と付き合ったり、ワンナイトラブをしたり、どっちつかずだったりして、恋愛スクランブル交差点にもほどがある。
それでいて、出逢いはサイアク!会うたび喧嘩!だけど何度も出会ってしまう… みたいなベッタベタな展開は、安心感のあるドキドキを届けてくれるし、一周回って今の時代の私たちには新鮮だったりする。
あと、やっぱり『男女7人』シリーズに共通して言えることは、日本が豊かさを極めた時代の、華やかな雰囲気が映し出されている、ということだ。バブル感いっぱいのファッション、出逢いに貪欲な男女、マンションとか平気で買うし、平気でみんなアメリカとかに行く(笑)。
もう、豊かさのベースがすごい。
『夏物語』のテーマ、石井明美の「CHA-CHA-CHA」 と共に、『秋物語』の主題歌森川由加里の「SHOW ME」はバブルを代表するテーマソングのようになっている。
優雅で甘美な「CHA-CHA-CHA」に対し、「SHOW ME」では恋のスリルとアダルティで危険な香りが感じ取れる。バブルは女も男も肉食な時代だったと聞くけれど、ドラマも音楽もどこかおしゃれで、文化的な印象が強い。
多分それが豊かさの余裕というものであり、当時の音楽シーンが未だに色褪せない理由なのだろうなと思うばかりである。
当時を過ごした皆さんは、いやいやバブルなんてもっとお下劣で…!とか、実際は… とか言いたいことはあるかもしれないけれど、私はトレンディな夢の中にもう少し浸っていたいのである。
甘い当時の思い出がある大人がいたら是非とも私に教えて欲しい。
カタリベ: みやじさいか