【紅葉】大混雑の涸沢カールを少しでも快適に楽しむ10のヒント! 紅葉登山の代名詞、涸沢カール。 氷河の浸食作用によって形成された直径約2kmのカールを囲むように穂高連峰がそびえ、圧巻の風景を有しています。 そして、荘厳な山々を彩る真っ赤なナナカマドや黄色いダケカンバが織り成す景観は、まさに紅葉の錦絵! 登山をしなくとも、人生で一度は見たい絶景です。 しかしこの時期、アクセスも小屋も大混雑。 そこで今回は、大混雑の涸沢紅葉ハイクを『少しでも』快適に楽しむためのヒントをご紹介します。

「涸沢の紅葉見ずして穂高を語ることなかれ」

涸沢の紅葉を表す有名な名言。涸沢カールは日本一の紅葉と言われ、2019年は9月下旬から10月中旬までが紅葉シーズンとされています。ハイカーなら誰もが憧れる美しい紅葉エリアですが、紅葉には「当たり年」があり、様々な自然条件が重なり葉の色付き具合が毎年異なるのです。 運良く「当たり年」に涸沢カールに行くことが出来たなら、それはきっと想像を超える美しさでしょう

当たり年の条件

見頃の時期は、年によって多少バラつきはありますが、おおむね、9月中旬から大部分で色付きはじめ、9月末~10月初旬にピークを迎えます。 夏の気温が高いこと、日照時間が長いこと、昼夜の寒暖差が大きいこと、充分な降雨があることなどが良い紅葉の条件となりますが、ここ最近では、小屋番さんが「10年に一度の紅葉だ」と満面の笑みで話されていた2012年が大当たり年でした。

運良く筆者もこの大当たり年を逃すことなく紅葉ハイクを楽しむことができましたが、眼前の赤と黄が織り成す広大な美の絨毯に、「自然が創り出す偉大なる美しさ」を心の底から感じられた忘れられない経験となりました。

・・・しかし、当然ながら大混雑!

そんな大人気の涸沢カール、その混雑ぶりは駐車場からすでに始まります。 早朝の上高地への乗り換えは大行列、登山道もハイカーが途切れることはなく、その紅葉行進は前後びっしり、ペースは速くても遅くても合わせるのが大変。 小屋はまるでフェス会場が如く人が溢れ・・・。
大人気スポットであるがゆえ致し方ないですが、今回はそんな大混雑の涸沢カールを少しでも快適に楽しむためのヒントを紹介していきます!

激混み必至! 紅葉の涸沢を少しでも快適に楽しむ10のヒント

①上高地へのアクセスは、バスやタクシーで!

涸沢カールへの登山基点となる上高地バスターミナルへはマイカー規制があり、専用バスかタクシーでのアクセスが必要。 ここでは、「沢渡 (さわんど)」からのアクセスを例に挙げ紹介します。

【バス】
2019年4月17日(水)~11月15日(金)の期間、沢渡発 ~ 上高地着の始発は特定日に限り5:00始発、特定日以外は6:00始発。 往復割引運賃2,050円/1名。

【タクシー】
定額¥4,200/台のため、4人で乗車の場合、@¥1,050/人。 また、タクシーは4時過ぎには何台かやってきて、乗車定員になった車両から一足先に中の湯ゲート前に並んでいくため、5:00のゲートオープン後、バスより先に進入・走行します。

②涸沢テント場は激戦区!早着&コンパクトな幕体がオススメ

上高地バスターミナルからは、横尾経由のルートが早着できてオススメ。 この時期はみんな涸沢目指し急ぎ足。 初めての方はそのペースにきっと驚くでしょう。 涸沢カールのテント場は、ゴロ石や岩が多く、小屋に近い幕営適地は早い時間に売り切れます。 また、数に限りがありますが、有料でコンパネのレンタルも。 大きいテントだと幕営適地確保に苦労するため、コンパクトな幕体が望ましいでしょう。

遅着、または大きいテントしか持っていない場合、小屋からは離れますが、テント場そのものは広くキャパは大きいため、利便性や快適性はさておき、どこかしらには幕営可能です。 また、テント破れ防止のため、フットプリント(グランドシート)必携です。

③小屋は大混雑!快眠グッズがお役立ち

小屋泊の場合、紅葉シーズンの「涸沢ヒュッテ」「涸沢小屋」は大混雑。1組の布団に2~3人で寝るのが普通です。 そのため、耳栓、アイマスク、インナーシーツなどを持参すると、少しでも快眠に役立ちます。
健脚な方の場合、カール上にある「奥穂高山荘」「北穂高小屋」まで登って宿泊すれば、混雑は大幅に緩和しますので、上から紅葉を眺めるのも一案です。 但しその場合、後述⑧に注意!

④朝夕のWCは大行列!携帯トイレが大助かり!

この時期の週末、小屋もテント場も満員御礼になるため(実際には定員の数倍)、朝夕など集中する時間帯は、数十メートルのトイレ行列が・・・!そのため、尿意・便意を感じてからではキケンかも?!小屋番さんがトイレ行列の誘導をしてくれていますが、男性の「小」の場合、空いていることもあるので一声掛けて聞いてみると使えることも。 いずれにしろ、余裕をもって行っておくのが◎。 そんな時、緊急時にも役立つ携帯トイレを幾つか持っていくと、いざという時本当に助かりますよ!

⑤カラフルなテント村は昼も夜も素晴らしい景観!

紅葉を狙ってハイカーが殺到するこの時期のテント場は、カラフルなテントが所狭しと並び、昼は色取り取りのアメ玉が散らばったかのような風景が、夜はテントの灯りがまるで散りばめられた宝石のように輝いており、我々ハイカーの目を楽しませてくれます。 一見の価値ある素晴らしい景観のため、大混雑を逆に楽しんでしまいましょう! ちなみに、大当たり年の2012年10月の3連休のテント数は、実に2,000張以上だったとか。 圧巻ですね!

⑥涸沢ヒュッテ名物、おでんと生ビールを楽しもう!

涸沢にきたら、やっぱり名物のおでんと生ビールは欠かせません! ヒュッテの外テーブルで、紅葉のカールとテント村を眺めながら至福のひとときを。 早い時間から注文が立て込んでくるため、時間を要したり品切れの恐れもありますので、早めオーダーが◎です。

⑦モルゲンロートで素敵な朝を!

涸沢カールは、穂高連峰の東側に位置しているため、朝日を燦々と浴び赤く染まる穂高の峰々のモルゲンロートを見られることが多いです。 天気に恵まれたら素晴らしい朝を迎えることができます。

⑧降雪の恐れあり! ダウンなどの防寒対策は必須

北アルプスの高山帯では、既に降雪の恐れがあります。 フォト撮影日は未明から降雪し、シーズン初冠雪となりました。 フリースやダウンなどで防寒対策をしっかりし、下界とは環境が違うことをきちんと覚えておきましょう。 特にテント泊の方は、睡眠時の防寒対策を入念に。

また、ザイテングラートも早朝は氷と雪がつく状態で滑落事故も発生。 着雪した奥穂や北穂へチャレンジする際や、稜線上の小屋に宿泊された方は、足元が滑りやすいので充分な注意が必要です。

⑨帰路はパノラマコースがオススメ!

ある程度歩き慣れた方ならば、上高地への帰路では、景観の良いパノラマコースにチャレンジしてみましょう。 鎖やロープの張られた箇所をいくつか通過しますので、落ち着いて注意を払って歩行してください。 フォトのように穂高連峰に囲まれるカールを望め、大迫力の景観を楽しめます。

また、パノラマコースもナナカマドやダケカンバなど沢山の木々が紅葉していますので、日本の秋を愛でる素晴らしいハイキングが楽しめます。 往路では、早着のため急ぎ足でしたが、復路はのんびりと紅葉を楽しみながら歩きましょう。

但し、こちらも渋滞し待ち時間も発生するため、想定コースタイムどおりにはいきません。 時間に余裕を持っての出発が◎。 お急ぎの場合は、横尾経由で帰りましょう。
また、コース名の響きや距離的に短く感じられるなどで、特に初心者や山慣れしていない方が怪我をするケースがあるため、自身の登山レベルを考慮のうえ、ルートを選定しましょう。

⑩上高地からもやっぱりタクシーの行列の方が早いかも!?

沢渡に戻る交通手段もバスかタクシーになり、いずれも大行列です。 タクシーは定刻出発ではなく随時運行しているため、こちらの行列に並んだ方が回転が早い印象です。 4人パーティーでない場合、乗り合いの頭数を揃える必要がありますが、行列の中で声掛けすれば、すぐに見つかることが多いです。 モラルを持って常識的な範疇で声掛けをするようにしましょう。 また、時にはタクシー運転手さんが声掛けしてくれることもあります。

それでもやっぱり涸沢の紅葉は見る価値あり!

いかがでしたか? 大混雑する涸沢カールですが、やはりこれだけの紅葉が見られるところはなかなかありません。 防寒対策をしっかりした上で、少しでも快適に楽しめる工夫をし、1年にワンチャンスの素晴らしい涸沢の紅葉を満喫しに行きましょう!

ヒントのまとめ

①上高地へのアクセスは、バスかタクシーを利用しよう!
②涸沢テント場は激戦区!早着&コンパクトな幕体がオススメ。
③小屋は大混雑!快眠グッズがお役立ち。
④朝夕のWCは大行列!携帯トイレが大助かり!
⑤カラフルなテント村は昼も夜も素晴らしい景観!
⑥涸沢ヒュッテ名物、おでんと生ビールを楽しもう!
⑦モルゲンロートで素敵な朝を!
⑧降雪の恐れあり!ダウンなどの防寒対策は必須
⑨帰路はパノラマコースがオススメ!
⑩上高地からもやっぱりタクシーの行列の方が早いかも!?

それでは皆さま、どうぞ良い山行を!

文 三宅 雅也 (山岳ライター、長野県自然保護レンジャー)

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