第1回「愛で支配される世の中を夢見て生きる」

2020年東京オリンピックは利権に涎を垂らす金権の祭典だ!

ルーフトップを読む読者であれば、世の中に蔓延っている「常識」というものに違和感を覚える人間は多いだろう。

今この国の現状を見れば、「常識」が如何に異常なものかがわかる。

仮設住宅住まいを余儀なくされ、未だ将来の見通しの立たない被災者を蔑ろにした2020年東京オリンピックでは、今まで行なわれたオリンピックを遥かに超える巨額な金を使いながら、無償ボランティアという名の労働で国民を騙して搾取し、異常な暑さにより毎年死者が出る夏に開催され、観客や選手の生命すら危険にさらされる。ハッキリ言おう。2020年東京オリンピックは災害である。

マスコミ報道では未来永劫隣国である韓国叩きが行なわれ、人種差別がこの国の「常識」としてまかり通り、愛国者を名乗る者が憎悪を煽動する。

戦時中に使われ、アジア諸国では侵略の証と捉えられている旭日旗を、アジア諸国の参加するオリンピック会場に持ち込むことを禁止せず、一体どこが平和の祭典なのだろうか。利権に涎を垂らす金権の祭典ではないか。

こうして「常識」が作り出されていることに、賢明な人間であれば気づいているはずだ。

幸いこのルーフトップの読者たちには、音楽やアートを通して「常識」の異常に気づく人間が多いと思われる。

音楽の中でもロックの部類に入る音楽は、世間に蔓延る「常識」と闘ってきた歴史がある。中でも筆者が10代から慣れ親しんでいるハードコアパンクなどのパンクという音楽は、音楽性や見た目でも「常識」からは逸脱し、一般常識から後ろ指を刺され馬鹿にされながら、人間らしく生きていたいという「常識」に従い生きている。

刺青は当たり前で、モヒカンやツンツンに立てた髪型を派手に染め、革ジャンには鋲を打ちまくり、ボロボロの格好で道路に座り込み、酒を呑む。

こうした行為を迷惑と捉えることができたなら、あなたは立派な常識人だ。全く違う「常識」を認識する幸運に恵まれた、選ばれし人間だ。

ひとつ俺たちの重要な「常識」を教えよう。俺たちは愛に基づいて生きているだけなんだ。愛のない世界へ中指を立てているだけなんだ。おかしなことをおかしいと言っているだけなんだ。そこには世の中の「常識」とは全く違う、愛に基づいた異次元の「常識」が拡がっている。

THE FOOLSの故・伊藤耕さんは唄っていた。「どうせ支配するなら愛で俺を支配してくれ」と。

愛で支配される世の中を夢見て生きても、そんなに辛い人生ではないと俺は信じている。

【ISHIYA プロフィール】ジャパニーズ・ハードコアパンク・バンド、DEATH SIDE / FORWARDのボーカリスト。35年以上のバンド活動歴と、10代から社会をドロップアウトした視点での執筆を行なうフリーライター。

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