「大衆車」、言い換えれば「時代に合わせた良品廉価なクルマ」。それがこれまでトヨタ・カローラに求められてきたニーズでした。しかし2019年9月17日に発表された12代目となる新型モデルはもはやその言葉は不要と思えるほどレベルアップしています。一足先に試乗した印象も交え、新型カローラがなぜ魅力的なのかを分析します。
世界で売れている名車だった
カローラの印象は国内で常に販売の上位に位置するクルマのイメージですが、実際は世界150カ国以上、累計販売台数は4,750万台(2019年7月末段階)を売り上げた文字通りのグローバルモデルです。
今回発表されたカローラはこれまで「アクシオ」と呼ばれてきたセダンと「フィールダー」と呼ばれてきたステーションワゴンタイプの「ツーリング」の2モデルです(※アクシオ、フィールダーとも法人需要を中心に販売は継続しています)。
昨年6月に先行する形で発売している5ドアハッチバックの「スポーツ」も今回のモデルチェンジに合わせて一部改良されています。
新型はボディが大きくなった?
これまでカローラシリーズは日本における5ナンバーサイズを基本堅守してきました。それは日本の道路環境や交通事情を考慮した場合、取り回しの良いボディサイズが必要だったからです。
「W×B」は写真のボディカラー「スパークリングブラックパールクリスタルシャイン」を専用設定します。セダンには珍しいリアワイパーも設定されます
しかし前述したようにカローラはグローバルで販売される世界的なクルマです。今、トヨタは「TNGA」と呼ばれる開発手法により、走りを含め性能が大きく向上しています。当然、新型カローラもこれに準じて開発されているわけで今まで以上にグローバルで通用するクルマ、特に全方位からの衝突安全性なども考慮するとボディの大型化は避けて通れません。
先行して販売された「スポーツ」の全幅は1,790mm、5ナンバーサイズの上限は1,695mmですので、約10cmも幅が広くなっているわけです。
どうなる? 日本のユーザー
しかし、これまでセダンやワゴンを乗り継いできたユーザーからは「ひょっとしたら新型カローラもボディが大きくなってしまうのでは?」という懸念が生じていました。
特にカローラセダン(当時はアクシオ)に長く乗ってきたユーザーからすれば、街中でのすれ違い、駐車場への入庫など「5ナンバーだから楽に扱えたのに……」という声も数多く聞こえてきました。
このまま、ボディが大型化してしまうと国内販売では非常に不利になる。そこでトヨタは大英断を下すことになります。
国内専用ボディを開発!
何と、新型のセダンとツーリングは国内専用となるナローボディをわざわざ開発しました。理由は前述した通り、これまでのカローラのユーザーニーズに応えるためです。
新型セダン&ツーリングの全幅は1,745mmとスポーツより45mmも短くなっています。
ツーリングの「W×B」は236万5000円(消費税10%込み)。エンジンは従来の1.5Lから1.8Lに変更されたことで走りのスムーズさは大幅に向上しました。価格や装備から考えてもかなりコスパが上がっていることがわかります
しかし、5ナンバーではなく、3ナンバーであることには変わりはありません。それではせっかくの専用開発も意味が無いのでは?と思う人もいるはずです。しかし実際の取り回し性能は従来と同等どころか扱いやすくなっているのです。
実は5mmしか拡大していない秘密
3ナンバーになりセダン&ツーリングもスポーツほどではなくても全幅は50mm拡大されました。これではいくら国内専用に開発したと言ってもやや説得力に欠けます。
冒頭に書いたように5ナンバーのメリットはすれ違いや駐車場の入庫のしやすさにあります。特にスーパーなどの駐車場では乗降時にドアを開けた際、隣のクルマに当たってしまう心配やUターンをする際などの小回りのしやすさも重要なポイントです。
しかし新型は全幅の拡大でネガになりそうな部分を極力改善している点がポイントです。
ツーリングを例に取ると、ドアミラーを格納した際、クルマのほぼ中心からの車幅は旧型が888mmなのに対し新型は893mmとわずか5mmしか拡大してません。
また駐車場などでドアを全開にした際、クルマの中心からの“開け幅”を比較すると旧型が1,729mmなのに対し、新型は1,723mmと6mm短くなっています。
そして小回り性能を表す「最小回転半径」では16インチホイールを装着する「W×B(ダブルバイビーと読みます)」グレードで旧型が5.5mだったのに対し、新型は5.3mと20cmも短くなっています。
つまり数字上は確かに拡大していますが、日本の道を走る以上、知恵と技術で使い勝手自体は旧型同等、部分的にはレベルアップさせたのが新型カローラの凄い部分なのです。
値上げ? 内容を考えるとコスパは上昇
新型と旧型を比較すると値上げした?という印象を受けます。
新旧のハイブリッド車でも「W×B」グレードでは旧型が248万2,920円(消費税8%)であったのに対し、新型は275万円(消費税10%)と消費増税分を考慮しても価格は上がっています。
しかし、新旧を比較すると先進安全装備である「トヨタセーフティセンス」の項目も増えており、安全性能自体が大きく向上しています。また前述したTNGAにより振動の少なさ、静粛性の向上などは実際試乗してみると正直そのレベルアップぶりには目を見張るほどです。
進化した先進安全装備の多くはステアリングに装着されたスイッチ類で操作できます。機能も大幅に増えているのが特徴です
そして新型には新たに「SDL(スマートデバイスリンク)」と呼ばれる装備が全グレード標準装着されています。これはディスプレイを装着したオーディオシステムのことで、スマホにインストールされているナビアプリをこのSDL上で使うことができるものです。
これが全グレード標準装備の「SDL」。7インチのディスプレイにAM/FMラジオのほか、各種機能をここで集中して操作できます
要はこれまで新車購入時にはオプションだったカーナビなどが基本不要になることで、トータルでの支払額の低減を図ることができます。
これに関しては次回詳しくご紹介したいと思います。