陸地が消失する世界

 温暖化により北極・南極の氷が解けて、陸地が海に没した世界。人類は海上に浮遊都市を造り、身を寄せ合って暮らしている▲1995年公開の米映画「ウォーターワールド」はそんな衝撃設定のSF活劇。だが、決してフィクションとは言い切れないとの思いに駆られる報告書が、国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)から発表された▲温室効果ガスの排出が最も多く続いた場合、海面は今世紀末に、20世紀末ごろと比べ最大1.1メートル上昇すると予測。排出を低く抑えた場合でも最大59センチ上がる。2300年には最大5.4メートル上昇するとしている▲日本では以前、海面が1メートル上がると、砂浜の9割が消失するとの予測が示されたこともあった。そうなれば、多くの島があり、全国有数の海岸線延長を誇る本県沿岸の風景は大きく様変わりすることになるだろう▲壱岐市が先月、国内自治体初となる「気候非常事態宣言」をした。気候変動のリスクを市民に訴え、対策推進への決意を示すもので、近年、記録的豪雨に見舞われたことへの危機感が背景にある▲台風の大型化や集中豪雨の頻発など、温暖化の影響を肌身で感じる事態が増えてきた。生態系の変化による漁業や農業への影響も出ている。もはや誰もが座視しているわけにはいかない状況にある。(久)

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