【台風19号】「あっという間に2階まで水が…」川崎濁流

台風で1階部分が水没したマンション=13日午前6時ごろ、川崎市高津区溝口6丁目

 日没後の静まり返った住宅街を濁流がのみ込んだ。マンションの住人1人が死亡するなど大規模な浸水被害に見舞われた川崎市高津区溝口6丁目。地区内に住む男性は「あっという間に自宅の2階まで水が押し寄せてきた」と当時の緊迫した様子を振り返った。

 水没したのは多摩川と平瀬川の合流地点に近く、堤防に囲まれているエリア。マンションや一戸建て、工場が立ち並ぶ土地は周辺より低く、住民によると、過去にも大雨のたびに水があふれることがあった。

 台風19号の襲来した12日は、昼すぎに市が住民に避難を呼び掛けた。浸水が一気に広がったのは夜になってからで、自宅マンションが水没した女性会社員(54)は「午後9時前に避難したが、あと20~30分遅かったら大変なことになっていた。午後10時半すぎには消防隊の救助ボートが出動していた」と回顧。自宅2階まで水が押し寄せ、屋根裏の納戸に上がって難を逃れた男性は「今まで水が出たこともあったが、これほどひどいことはなかった」と話した。

 市が開設した市立西高津中学校の避難所には近隣住民約600人が避難した。一夜明けた13日、家族5人で避難した主婦(29)は「マンションの1階なので浸水やガラスの飛散が心配で早めに避難したが、幼い子どもの寝かしつけに苦労した」と疲れた表情で語った。

 6歳の長男と一緒に避難した女性会社員(38)は「夕方には人が増えて武道室に収まりきらず、教室まで開放していた。毛布の貸し出しがあったが、食べ物は自分たちで用意した。自宅の被害が心配」と家路を急いだ。

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