丸のセーフティスクイズに凝縮された「野球偏差値の高さ」 日本Sは「巨人有利」か

巨人・丸佳浩【写真:Getty Images】

決勝点をもぎったセーフティースクイズは「チームに対しての“献身”が出た」

 巨人は13日、クライマックスシリーズ(CS)ファイナルステージ第4戦で阪神に4-1で快勝。6年ぶりの日本シリーズ進出を決めた。原辰徳監督が復帰した今季、5年ぶりのリーグ制覇を果たした巨人。短期決戦のCSでもその強さを見せつけた。

 ヤクルト、日本ハム、阪神、横浜の4球団で捕手としてプレーし、昨季まで2年間はヤクルトでバッテリーコーチを務めた野球解説者の野口寿浩氏は、決勝点をもぎ取った丸佳浩外野手のセーフティスクイズについて「丸の野球偏差値の高さが分かったプレー」と絶賛。「巨人の方が全ておいて上手だった」と振り返った上で、ソフトバンクと対戦する日本シリーズは「互角以上」と“巨人有利”を予想した。

 誰もが驚いた。1-1の同点で迎えた6回、2死三塁のチャンスで打席に入った丸は、初球のシュートに対して右足を上げてから何とセーフティスクイズ。三塁方向に転がったボールに阪神先発・西も素早く反応し、一塁へとボールを投げたが、送球はわずかに逸れてセーフとなった。味方、敵、ファンと誰もが予想していなかった衝撃的なプレー。野口氏も「凄かった」と唸った。

「丸という選手の野球偏差値の高さが改めて分かりました。あそこであれができるんだから凄い。全員がノーマークだったと思います。ここでバントすると思った人は誰もいないでしょう。西に対して、自分もチームも打ちあぐねていて、何をやったら最も点を取りやすいかと考えた結果があれだったと思います。チームに対しての“献身”が出たかなと。ここで点を取ればかなり有利になるというところ。ピッチャーが代わった後で、ここから巨人は勝ちパターンのピッチャーがどんどん出ていくという展開になった中で、1点リードしておくためには何をするか、というところでしたね」

日本シリーズの展望は…「巨人は原監督の采配というプラスアルファがある」

 この丸のプレーに代表されるように、CSファイナルはシリーズを通して巨人が上手だったと野口氏は振り返る。

「随所に、全てにおいて少しずつ巨人のほうが上手でした。この試合も最初から見ていくと、初回に四球で出た福留がいきなり走りましたが、『今日は足を使ってくるんだ』となってから、それ以降は全部封じました。近本が走った時に至っては、しっかりと外していました。そういうところを見ても、少しずつ巨人が上を行っていました。ゲレーロが岩崎からホームランを打ったところでも、ほぼ代走の増田大が打たせています。つまり、あそこであの(代走の)カードを切った原監督が打たせたということになります。ベンチワークでも1枚上をいっていました。実際に岩崎はすごくランナーを気にしていたので。このシリーズでは、最後までそういうものが出たと思います。

 ただ単に打ち勝った、ただ単に投げて抑えた、だけではありません。本当なら阪神が巨人の嫌がることをどんどんやっていかなかればいけなかったのに、巨人が阪神の嫌がることをどんどんやっていった。スキを見せなかったというより、全体的に巨人が上だったという表現が一番しっくりきますね。原監督のやりたい野球が浸透している。阪神が浸透していないということはありませんが、巨人のほうが少し上でした」

 レギュラーシーズン最後の6試合で驚異的な粘りを見せ、CSファイナルまで勝ち上がってきた阪神の勢いをがっちりと受け止め、上回った巨人。では、ソフトバンクと対戦する日本シリーズはどうなるのか。野口氏は「CSのときみたいな野球ができれば(巨人の有利は)五分以上でしょう。ただ、菅野がどうなのか。そこが心配の種ですね」と話す。山口が力強く牽引する先発陣だが、不安もあるだけに、エースの状態が上がってくるかが大きなポイントなる。

 ただ、巨人にはさらなる大きな“強み”もある。

「ソフトバンクは誰が突然爆発するかわからないところがあります。内川に代打・長谷川を送れるほど、選手層も厚い。先発投手も枚数で見たらソフトバンクが有利でしょう。戦力が見たら互角くらいという印象を受けます。でも、巨人にはプラスアルファで原監督の采配があります。そう考えると、互角以上となるのではないでしょうか。いずれにしても、面白いシリーズになるのは間違いない」

 巨人とソフトバンクの日本シリーズは2000年以来。長嶋終身名誉監督と王貞治球団会長の19年ぶりの“ON対決”としても注目が集まっているが、ハイレベルなシリーズが期待できそうだ。(Full-Count編集部)

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