脱炭素実現へ 苦しい足元の火種 小泉環境相に野党追及

衆院予算委員会で答弁に立つ小泉環境相=11日午前、国会

 脱炭素社会の実現に意欲を示す小泉進次郎環境相(衆院神奈川11区)が、足元の“火種”に苦しんでいる。温室効果ガスの排出が多い石炭火力発電は「減らすべきだ」と訴えるものの、地元の神奈川県横須賀市では新設計画が進展。環境相が関わる手続きを終えた案件だが、野党は気候変動対策に逆行する「象徴」として追及を強める。国際社会からの視線も厳しく、「脱石炭」を目指す旗振り役の試練となりそうだ。

 「温暖化対策は、石炭火力発電所をどうするかがメインだ。新設を容認するのか」

 11日の衆院予算委員会。立憲民主党議員から追及を受けた小泉氏は「毎年の電気事業のレビューをしっかり見ていく」と述べるにとどめた。立民議員が横須賀での新設計画を引き合いに「新設中止を地元から始め、日本の流れを変えるべきだ」と訴えると、野党席から大きな拍手が湧き起こった。

 小泉氏の地元で進むのは、久里浜の火力発電所を2基で計130万キロワットの石炭火力発電所に建て替える計画。東京電力フュエル&パワーと中部電力が出資する火力発電会社「JERA(ジェラ)」が8月に着工し、2023年以降の稼働を目指している。

 ただ、環境相が意見を述べる環境アセスの手続きは昨年までに完了しており、新設を巡り「環境相にできることはもうない」(同省幹部)状況だ。8月には前任の原田義昭氏が石炭火力発電の利用抑制を東電に要請したが、その時も「特定の施設にああしろこうしろという立場にはなく、そうすべきでもない」と説明している。

 小泉氏は立民議員に「いくら地元でも、横須賀の案件で行政全体をゆがめてはならない」と答弁したが、16日までの予算委では「脱石炭」に向けた取り組みを繰り返しただされた。

 国際的に見れば、脱炭素社会実現をうたう先進国で石炭火力を新設する国は少数。日本政府に向けられる視線は厳しく、小泉氏も出席した米ニューヨークの国連気候行動サミットの際は、海外メディアから具体性の無さが指摘された。

 ある野党議員は「横須賀での新設計画は、政府の後ろ向きな姿勢を示す象徴」と述べ、国会でのさらなる追及を示唆する。歯切れの悪い答弁を繰り返せば、安倍政権のイメージダウンも狙えるからだ。

 一方、政府関係者の一人は、小泉氏の言動ばかりが注目されて冷静な議論が難しくなることを懸念する。「個別計画をどうこうではなく、将来のエネルギー構成をどうするか、大局的な議論が重要だ」

© 株式会社神奈川新聞社