メクル第404号 諫早市立御館山小 VS 長崎ウエスレヤン大 熱弁!! ビブリオバトル みんなに教えたい1冊は… 本から広がる新たな世界

ミニビブリオバトルに出場した(左から)田中さん、山口さん、高橋さん、相川さん、浅川さん

 面白い本に出合ったとき、「だれかに教えたいな」と思ったことはありませんか?
 そんなおすすめ本をみんなで紹介(しょうかい)し合い、最も読みたい“チャンプ本”を投票で決める「ビブリオバトル」が9月24日、諫早(いさはや)市西栄田(にしえいだ)町の市立御館山(みたちやま)小(大坪広弥(おおつぼひろや)校長、636人)で開かれました。近くにある長崎ウエスレヤン大のサークル「ぶっく倶楽部(くらぶ)」のメンバーと5、6年生が対決。熱いバトルを繰(く)り広げました。

 同校では国語指導(しどう)の一環(いっかん)で、2015年から長崎ウエスレヤン大の学生にバトルを披露(ひろう)してもらっていました。ところが昨年、子どもたちが「自分たちもやってみたい」と手を挙げ、大学生に挑戦(ちょうせん)。小学生と大学生の初対決は、大差で小学生に軍配が上がりました。

◆生き生きと

 2度目の対戦となった今回は、6年の山口千晴(やまぐちちはる)さん(11)と高橋悠勝(たかはしはるまさ)君(12)、5年の相川遥斗(あいかわはると)君(10)の3人がバトラー(発表者)に名乗りを上げました。対する大学生側は1年の田中大空(たなかおおぞら)さん(19)と浅川晴由(あさかわはるよし)さん(18)。
 通常(つうじょう)の持ち時間は1人5分ですが、今回は3分のミニバトル。それぞれの発表後に会場からの質問(しつもん)タイムがあります。すべて終わった後に5、6年約200人が投票し、チャンプ本を決定する仕組みです。本番前、小学生3人は口をそろえて「緊張(きんちょう)する」と話していました。
 山口さんは、本番2日前に読んで「今までで一番印象に残った」という本を紹介。不登校の子どもが離島(りとう)でさまざまな体験をする「青いいのちの詩(うた)」(折原みと作)です。「この本を通して死ぬことの恐(おそ)ろしさや生きることの喜びと大切さ、命の尊(とうと)さが学べます」と生き生きと発表し、図書室のどこに置いてあるかも伝えました。
 「お金に興味(きょうみ)がある」という高橋君が選んだ本は、「お金のひみつ」(川村雄介監修(かんしゅう))です。世界のお金の種類の多さや不景気になる仕組み、お金の役割(やくわり)など分かったことを熱弁(ねつべん)していました。
 「図鑑(ずかん)なのに、まるで話し掛(か)けられているような紹介文です」。そう相川君が訴(うった)えたのは「世界で一番美しい元素(げんそ)図鑑」(セオドア・グレイ著(ちょ))。世の中のすべてを作っている元素の性質(せいしつ)やエピソードと共に、「神秘(しんぴ)的で幻想(げんそう)的な写真がある」と猛(もう)アピールしていました。

◆体験を交え

 大学生の田中さんは、おとぎ話の世界に吸(す)い込(こ)まれた主人公が、元の世界に戻(もど)るため冒険(ぼうけん)に出る「ザ・ランド・オブ・ストーリーズ」(クリス・コルファー著)を紹介。24の短編(たんぺん)童話には「みんなが知っている童話もある。一つ一つの話は短いので、苦手の人でも読める」と呼(よ)び掛けました。
 「映画(えいが)『天気の子』を知ってる子は手を挙げて」。そんな問いかけからスタートしたのは、トリを務(つと)めた浅川さん。同じ監督が制作(せいさく)した映画「君の名は。」のサイドストーリー本「君の名は。」(加納新太著)の世界に引き込(こ)みました。自身の体験談や身ぶり手ぶりを交え、「自分に自信がない人は、この本を読んで自分は自分の人生の主人公なんだと感じてもらえたら」と強調していました。
 観客となった会場の児童からは「その本は何ページあるの?」「一番好きな元素は?」など幅広(はばひろ)い質問(しつもん)が相次ぎ、発表者に夢(ゆめ)を尋(たず)ねる子どももいました。
 5人が作品への“愛”をぶつけ合い、いよいよ投票。観客がそれぞれ心に響(ひび)いた本に手を挙げました。さあ、勝敗の行方は-。

◆本と人知る

 浅川さんの本が97票を集め、チャンプ本に決定。見事、大学生がリベンジを果たしました。高橋君は「もっと(会場に)問いかけて引きつければよかった」と、王者・浅川さんの発表が参考になった様子。相川君は「好きな本だけじゃなくて、流行に乗せるとか、みんなに読ませる作戦も必要」と分析(ぶんせき)。山口さんは「悔(くや)しいけど、きちんと本番で発表できた」と晴れやかな表情(ひょうじょう)でした。
 観客の6年、坂田和樹(さかたかずき)君(12)は「自分が読むジャンルとは違(ちが)う本を知ることができて良かった。元素図鑑を借りてみたい」。5年の山口彩羽(やまぐちあやは)さん(11)も「聞いたことがない本ばかりで読んでみたくなった。おとぎ話の本が気になる」と目を輝(かがや)かせていました。
 発表者はより深く本を楽しみ、どう観客に伝えるかを考える。観客は自分の知らない本に興味を持ち、その発表から人となりを知ることもできる-。1冊(さつ)の本から新たな世界が広がっていました。

ビブリオバトルの様子=諫早市立御館山小
それぞれ「読みたい!」と思った本に挙手で投票

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