30年前にレジ袋が有料化されたイタリア、1枚12円でも不満はないのか

最近、レジ袋を有料化するスーパーが増えてきました。現在はまだ各事業者の判断で実施されている状況ですが、政府は2020年4月以降、スーパーやコンビニを含むすべての小売店でレジ袋の有料化を義務付ける方針です。
このレジ袋の有料化にはさまざまな意見があり、特に弁当や冷凍品など温度帯の異なる商品を扱うことが多いコンビニ業界からは反発の声も聞かれます。

一方で、諸外国に目を向ければすでにレジ袋を有料化もしくは全面禁止している国は少なくありません。今後、すべての小売店でレジ袋が有料化されれば、私たちの生活はどう変わるのでしょうか。30年以上も前からレジ袋を有料化しているイタリアの例をご紹介します。


イタリアのレジ袋は1枚12円

イタリアでレジ袋が有料化されたのは1989年のこと。レジ袋1枚に対して100リラ(約6円)を課税する制度が導入され、それに袋の原価100リラを上乗せして200リラ(約12円)で販売されるようになりました。さらに、2011年には環境負荷の少ない生分解性プラスチック以外のレジ袋を禁止する法律が施行されています。

イングランドにおけるレジ袋の有料化が2015年、またドイツでは2018年末までにレジ袋の80%を有料化することを目指したと考えると、イタリアはEUでも比較的早い段階でこの問題に取り組んでいたと言えるでしょう。

通貨がリラからユーロに変わった現在もこの制度は続いており、現在の価格はおよそ10セント(こちらも約12円)ほど。2〜5円程度で購入できる日本と比べると、ちょっと割高な印象があります。

レジ袋はワンサイズ、薄くてゴワゴワ

レジ袋のサイズはどこもワンサイズで、日本のスーパーでいう大サイズくらいの大きさのみ。たとえリンゴ1個の買い物だとしても小さな袋はありません。そのため、少量の買い物であればそのままカバンに入れたり、手で持ち帰る人もよく見かけます。

透けそうなくらい薄く、少しゴワゴワしている

ちなみにレジ袋の品質はあまり良くなく、薄くてペラペラです。お菓子の箱など角があるものを入れるとすぐに穴が開くし、持ち帰る途中で持ち手がちぎれることもしょっちゅうです。そのため、週末に1週間分の食料をまとめて買うような人はほとんどエコバッグを利用しています。このあたりは、1枚あたりの価格と合わせて、レジ袋の品質が良くないことが抑止力につながっていると言えるかもしれません。

エコバッグはどのスーパーでも1ユーロ(約120円)ほどで売られています。レジ袋よりたくさん入るし、1年くらい使っても破れる気配がないので、とても便利です。

エコバッグはレジ付近に売られている

レジ袋の有料化、意外とイタリア人は不満に思ってなさそう

日本では一部で反対の声も聞かれるレジ袋の有料化。ただ、イタリアの例を見る限り、慣れてしまえばそれほど不便を感じることもないのではとも思います。その理由はなぜなのか、イタリアの状況を見ていて感じることをご紹介しましょう。

レジ袋は必要なときだけあればいい

これは有料化されてある程度時間が経っていることもありますが、イタリアではレジ袋を“必要なときだけ”使うことが習慣化しているように感じます。そもそもレジ袋はお金を払って購入するものなので、自分から言わない限りもらえません。会計前に「10円払ってまでレジ袋ほしいかな」と考えるタイミングがあるので、必要なときだけ使う習慣が自然と身につくのです。

買い物してレジ袋がないのは不便に感じるかもしれませんが、考えてみると意外にそうでもないことに気づきます。

そもそも少量の買い物であればカバンやリュックの中に入れれば十分ですし、ランチを買う場合は手で持ち帰れる量のはず。大量に食料品を買い込む時は買い物のために外出することがほとんどなので、家からエコバッグを持ってくれば用は足ります。仕事帰りの買い物でエコバッグを持っていない時や、生ものなどカバンに入れたくないものを買った時はレジ袋が欲しくなりますが、10円程度を払って購入する選択肢もちゃんと用意されています。そう考えると、レジ袋が有料であることで困る場面は意外とないように感じるのです。

レジ袋を買うかどうかは、あくまで自分の選択

レジ袋が有料になってもさほど不満を感じないのは、エコバッグや手で持ち帰ることが習慣づいているだけでなく、必要なら袋を購入する選択肢がちゃんと用意されていることも理由としてあげられます。

イタリアにコンビニはありませんが、温かい惣菜と冷たいアイスを一緒に買ったときや、食品とケミカルな洗剤を一緒に買ったときなど、エコバッグ1つではちょっと……と感じる状況はよくあります。ただその場合も、分けたい人はレジ袋を余分に購入すればいいし、気にしない人はそのまま一緒に入れて帰ればいいだけのはず。どちらを選択するかはあくまで個人の自由という意識が根付いています。

とりあえず全員にレジ袋を配布するのではなく、必要な人だけ買えばいいという発想は合理的で、環境に負荷を与える分だけお金を払うという意味でもフェアなように感じます。

レジ袋を使い慣れている私達にとっては、2020年からいきなり有料になると聞くと抵抗を感じるのも本音です。ただ、海外に目を向けると、使い捨てのレジ袋を禁止しているオーストラリアや、そもそも製造することすら禁止しているケニアなど、より厳しい対応を行っている国も数多くあります。

こうした動向を見る限り、レジ袋の有料化やその先にある全面廃止は、今の時代において避けられない流れと言えるでしょう。便利さを享受するだけでなく、必要のないものは使わない。そんな発想の転換が求められているのかもしれません。

© 株式会社マネーフォワード