まるで別の店みたい ファボーレ増床 館内広々 買い物満喫

大勢の人でにぎわうフードコート=ファボーレ

 「別の建物になったみたい」「売り場巡りが楽しい」。19日に増床リニューアルオープンしたファボーレ(富山市婦中町下轡田)には、開店直後から大勢の買い物客が詰め掛けた。新店の追加と既存店の改装が館内全体に新鮮味を与え、来店客は増築棟と既存棟を行き来しながら、買い物を楽しんだ。

 増床工事に伴い、8月半ばから一部店舗を除いて休業しており、2カ月ぶりの全面開業を迎えた。開店前には約6千人が並んだ。オープンと同時に来店した富山市西田地方の遠藤眞千子さん(48)は「この日を楽しみにしていた。店が様変わりして別の建物になったみたい」とテナント全体の7割を刷新した大規模改装に驚いた。

 既存棟と増築棟は複数の連絡通路でつながり、館内をぐるりと回遊できる買い物動線の良さが特徴。同市婦中町持田の山岸真矢さん(37)は「新しい店を気軽に見て回れる」と売り場巡りを満喫した。

 増築棟には北欧発のファストファッションブランド「H&M」、北陸初出店の「Mt.石井スポーツ」、既存棟には最新雑貨がそろう「ロフト」、大型子ども用品店「アカチャンホンポ」などが並んだ。キッズコーナーには、人の動きに反応して映像が変わるデジタルサイネージ(電子看板)が導入され、親子連れでにぎわった。

 フードコートは約900席に拡大。窓辺の小上がり席で3歳と0歳の子どもと昼食を取った同市奥井町の片岡淳さん(31)は「子どもを横に寝かせられるので助かる。子育て世代に優しい店になった」と笑顔を見せた。食物販の専門店を集めたエリアでは、レモネードやバームクーヘンなどが人気を集めた。

■増税・後継者不足で逆風 中心商店街に追い打ち

 ファボーレの増床リニューアルによって増えた専門店は71店に上り、新たな商店街の誕生に匹敵する規模だ。富山市中心部の既存商店街への影響は大きい。

 19日は同市総曲輪3丁目のグランドプラザでイベントが行われたが、客足は鈍かった。総曲輪通り商店街の「靴のオーマツ」店主、松本知子さん(51)は「いつもより人通りが少なく見える」と話す。「19日は忙しくないだろうなと思っていたけど、やっぱりね」と苦笑いした。

 「来るべきものが来たという印象だ」。協同組合中央通商栄会の黒田輝夫理事長はファボーレ増床を警戒する。「商店街は後継者不足や消費税増税といった逆風の中にあり、廃業の動きが加速するかもしれない」と危機感をにじませた。

 県内ではファボーレに先立ち、イオンモール高岡(高岡市下伏間江)が9月に増床リニューアルした。県内ショッピングセンター(SC)の2強がさらにパワーアップした形だが、近年は「アマゾン」「楽天」などインターネット通販の台頭が著しく、安穏としていられるわけではない。

 総務省の家計消費状況調査によると、2018年にネット通販を利用した世帯の割合は39.2%で、10年前の16.3%から2倍以上に増えた。ネット空間から自由に商品を選び、いつでも、どこでも購入できる便利さを前に、広大な売り場と豊富な品ぞろえというSCの強みは薄らいでいる。

 今回のリニューアルでは両SCともフードコートを拡大した。子ども向けの遊び場も充実させ、モノを買うより体験を楽しむ「コト消費」を重視している。インターネット通販への対抗手段として実店舗ならではの魅力を追求し、生き残りを図る。(経済部・熊谷浩二、池亀慶輔)

■国道に長い車列

 ファボーレへのアクセス道路の国道359号は19日、県内外から買い物客で渋滞し、駐車場も終日混み合った。店舗前の国道359号は長い車列ができた。正午前に訪れた富山市赤田の女性会社員(36)は「10分ほどの渋滞につかまった。駐車場は何周もして、やっと見つかった」と少し疲れた様子だった。

 ファボーレによると、700台分の臨時駐車場を設けたため、完全な満車状態にはならなかった。富山駅北口とを結ぶ無料シャトルバスの運行も混雑緩和につながったという。

 臨時駐車場は土、日曜と祝日に利用可能。無料シャトルバスは11月24日までの土、日曜と祝日に運行する。

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