突然の告白、18歳の娘が出産 育児放棄で祖母が「母」に

【連載】家族のかたち 里親家庭の今(1)

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 偏差値は70以上、難関大学合格も間違いなしの優秀な生徒だった。進学校に通っていた高校3年(当時)の娘からの突然の告白に、驚きを隠せなかった。
 関西地方に娘と暮らしていた3年ほど前。夏休み前のある日の夕方、学校から家へ帰る車の中に明るい声が響いた。

 「妊娠したんよ」

 シングルマザーの千恵さん=50代、仮名=はハンドルを握ったまま、たじろいだ。1歳上の彼氏がいることは知っていた。「でも、まさか」。結婚するために計画した妊娠だった。
 両家で話し合い、結婚を前提に出産することを決めた。学校は事情を理解し、リポート提出で卒業させてくれた。だが、明るい未来は急転する。妊娠40週ごろ、優しかった彼氏が豹(ひょう)変(へん)。暴力が始まり、ついには「(子どもは)いらない」と言い放ち、玄関で彼女を突き飛ばした。彼女自身が児童相談所に通報。すぐに彼氏と引き離された。
 暴力を受けたにもかかわらず、娘は彼氏への思いを断ち切れないでいた。出産当日。立ち会うはずだった彼氏は、電話にさえでなかった。彼氏の名を叫び、泣きながら男の子を出産。本来ならば幸せに満ちた瞬間のはずだが、千恵さんは娘の姿を見るのが「本当につらかった」。
 出産後はうれしそうな顔をしていた娘。だが、日がたつにつれ、予想していない事態が起きてしまう。「1人では育てられない」。娘が育児を放棄し、子どもに全く関心を示さなくなってしまった。
 困り果てた千恵さんは、児相に相談。男の子は関西の乳児院に預けられることになった。入所から半年が過ぎたころ、児相からある提案を受ける。「養子という形にしてはどうですか」
 「親である娘が育てることが一番いい。でも無理なものは無理。誰かが保護者にならなければいけない」。千恵さんは悩み抜き、祖父母などが親代わりになる「親族里親」として受け入れることを決断した。
 両親にも協力してもらうため、2年前の秋、故郷長崎に戻った。男の子は乳児院での生活を終え、今年2月、千恵さんの元で「親子」としての生活が始まった。
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 予期しない妊娠、死別、虐待などの理由で実の親と暮らせない18歳未満(一部除く)の子どもが全国に約4万5千人、県内には約530人(4月1日現在)いるとされる。そんな子どもたちの居場所として、家庭的な環境で育てる里親制度に世間の関心が高まっている。実の親と暮らせない子どもにとって、幸せへの選択肢となりうるのか。県内の里親家庭を見つめ、さまざまな「家族のかたち」を考える。10月は里親月間。