横浜・綱島温泉碑の救出劇、ドキュメンタリーに 11月から上映

「続・綱島温泉物語~石碑が教えてくれたこと~」のワンシーン(港北ふるさとテレビ局提供)

 綱島温泉(横浜市港北区)の発祥を伝える石碑が廃棄寸前に住民の尽力で地元に保存された昨冬の救出劇を、市民団体「港北ふるさとテレビ局」がドキュメンタリー映画にした。再開発が進む綱島で、石碑に秘められた価値と、希少な史料を守った住民の郷土愛を追った。11月から区内で上映される。

 石碑は「ラヂウム霊泉湧出記念碑」(縦1.2メートル、横50センチ、厚さ6.5センチ)。もともと樽町2丁目の民有地に立っていたが、更地化に伴い、昨年12月に廃棄されるところだった。

 この危機を聞き付けた住民が、町内会長で県議の嶋村公さんに相談。町内会が地元に保存するよう市に掛け合い、ことし2月に約50メートル離れた同じ町内の市有地に移設された。

 港北ふるさとテレビ局は、石碑を守った住民にインタビューし、この顛末(てんまつ)を映像化した。横浜開港資料館(中区)調査研究員の吉田律人さんも出演し、港北区内の樽町から大曽根にかけて綱島温泉の痕跡を探訪し、石碑の価値を解説する。タイトルは「続・綱島温泉物語~石碑が教えてくれたこと~」に決まった。

 大倉精神文化研究所(港北区)によると、源泉は1914年に発見され、石碑は33年に建立された。温泉街は50年代に80軒の旅館が並ぶほど最盛期を迎えたが、64年の東海道新幹線の開通で客足を奪われ、衰退した。

 11年前に最後の温泉宿が閉館。東急東横線に乗り入れる相鉄線の新駅建設工事が進み、近接する日帰り入浴の「東京園」が4年前に無期限で休業した。今回の映画は、この時に製作された「東京園休業の危機」の続編となる。

 港北ふるさとテレビ局代表の伊藤幸晴さん(58)は「温泉街の面影さえも消えゆく綱島で、石碑の存亡は住民にとって一大事でした。この機会に綱島温泉と地域の歴史を掘り下げようと試みました」と話す。

 上映会は▽11月8日午後6時半~、綱島地区センター▽同30日午後1時~、樽町地域ケアプラザ▽12月10日午後6時~、大曽根会館▽20年1月26日午前11時~、港北図書館-の4回。予告編は動画投稿サイト「ユーチューブ」(https://youtu.be/mWi7Co5g56g)で。

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