大山の農作物を鳥獣から守れ 麻布大と伊勢原市が連携

大山地区の山中で、鳥獣被害から農作物を守るための柵を補修する学生(中央)ら=9月27日

 神奈川県伊勢原市大山地区の農作物を、イノシシなどの被害から守る柵の補修作業に、麻布大学獣医学部(相模原市中央区)の学生が初めて参加した。山間部の同地区では高齢化で担い手が不足し、鳥獣被害も高い水準で推移している。そこで伊勢原市は同大に学生の参加を依頼。市は「鳥獣被害が起きない環境を整えるため、大学の知見を生かした対策を考えたい」と、同大とさらに連携したい考えだ。

 補修作業は9月27日、行われた。生産者や自治会長らでつくる「大山地区有害鳥獣対策協議会」の会員、市職員に加え、市内で動物の生態を研究している同大獣医学部動物応用科学科の学生ら9人も参加した。

 参加者は、イノシシが柵の下を掘って人里に侵入した跡などを確認。経年劣化や倒木で外れている柵のワイヤを修繕したほか、イノシシが人里だと認識できるよう、柵の周辺の草も刈った。同科3年の嶺田秋穂さんは「イノシシによる掘り返しや倒木が多くあり、柵を見回ることが大切だと感じた」と振り返った。

 市内の田畑では、稲を倒されたり、ミカンやカキ、サツマイモ、ナスといった農作物を食い荒らされたりする被害が後を絶たない。市農業振興課によると、被害総額は近年、2千万円前後で推移。2016年度の被害は113トン、2487万円。17年度に44トン、1036万円と大きく減ったが、18年度は71トン、1911万円と再び増えた。特に深刻なのはイノシシによる被害だ。例年、被害の半分程度を占めており、サルやシカなどを大きく上回る。

 こうした鳥獣から農作物を守るため、県は2002年度から04年度にかけ、高さ約2メートルの「広域獣害防止柵」を、大山地区など市内の山中に長さ約16.5キロにわたって設置。各地区の住民が点検と修理を担ってきたが、高齢化に伴い、修理の手が行き届かなくなっているのが現状だ。

 市は今回の作業を機に、「若い学生に参加してもらい、協議会とも連携して獣害対策を進めていきたい」と説明。協議会の松本新一会長(79)も「高齢化が進んで人材が不足する中、大学生と一緒に作業することで活気も生まれた」と喜び、「今後も若い力を借りながら、柵の維持管理を継続できたら」と期待した。

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