読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、投資用ワンルームマンションを購入した52歳の女性。家賃収入でローン返済をしつつ退職金で一括返済する予定ですが、その間に運用で貯蓄を増やしたいといいます。FPの伊藤亮太氏がお答えします。
老後の備えとして、私名義でワンルームマンションを購入しました。その部屋を貸し出して、家賃収入でローンを支払う予定です。定年(62歳)までは繰り上げ返済せず、私の退職金(2000万円ほど)で一括返済する予定です。
ただ、退職金はなるべく残したいので、それまでの貯蓄の増やし方を教えていただきたいです。特に、52歳からiDeCoやつみたてNISAなどを始める場合、どんなメリット、デメリットがあるのか知りたいです。夫と会計を別にしているので、詳細が分からないところが多いです。
〈相談者プロフィール〉
・女性、52歳、既婚(夫:59歳、会社員)
・子供2人:26歳、24歳(学生)
・職業:会社員
・居住形態:持ち家(戸建て)
・毎月の世帯の手取り金額:60万円
(夫27万円、妻33万円)
※夫は10月から定年後再雇用で月16万円になる予定
・年間の手取りボーナス額:260万円
(夫:120万円※再雇用後は不明、妻:140万円)
・毎月の世帯の支出目安:30万円(妻の負担分)
【支出の内訳(妻の負担分)】
・住居費:なし
・食費:7万円(外食含む)
・水道光熱費:1.8万円
・保険料:妻1.5万円(医療、がん保険)
・通信費:2万円
・車両費:1万円
・お小遣い:妻3万円
・その他:8万円(次男への仕送り)
・ワンルームマンションの返済:5.6万円(10月から)
・教育費:年間120万円(2021年3月卒業)
・自動車税:年間5.5万円
・固定資産税:年間21万円
【資産状況】
・毎月の貯蓄額:妻3万円ほど、夫は不明
・貯蓄総額:妻1600万円、夫は不明
・投資総額:なし
・負債総額:1630万円(ワンルームマンションのローン:10月から返済予定、物件購入額2049万円、借入額1630万円、金利1.73%、返済期間32年)
伊藤:ご相談ありがとうございます。FPの伊藤亮太です。
まず、旦那さんの方がどれぐらい持っているのかおわかりになっていないということですので、定年を一つの区切りに、どれぐらいあるのか聞いておいた方がよいと思います。
少なくとも、老後資金は確保できているのか、年金はどれぐらいありそうなのかは確認しておきましょう。問題がなければよいのですが、場合によっては奥様が何かしら負担することも出てくる可能性があるためです。
教育費の負担が終われば貯蓄ペースがアップ、老後は安泰?
次に、ご相談者様の意向をくみ取るならば、退職までは貯蓄に励む必要があります。
2021年3月に次男が卒業することで教育資金(仕送り)の負担がなくなりますよね。これにより、2021年4月以降は毎月11万円の貯蓄が可能になります。単純に利息がほぼ0だとしても、10年間で少なくとも1000万円は貯蓄できることになります。
現在ある貯蓄額と合計すると、62歳時点で退職金とは別に、奥様だけで2600万円ほどあります。老後資金2000万円問題は単純にいえばクリアできることになります。
活用すべき「3つの仕組み」
さて、仮に退職金でワンルームマンションの融資を一括返済すると仮定して考えていきます。
その場合、手元の資金と今後貯蓄できる金額をもとに、公的な資産形成の仕組みであるiDeCo、つみたてNISAでの運用を考えます。また、ふるさと納税を利用して、農産物、海産物などを受け取り、食費軽減をはかり貯蓄額を増やすのもよいでしょう。
少なくともこの3つの仕組みは利用すべきです。
また、景気動向を考慮すると、それ以外の部分は基本的に普通預金でコツコツ貯蓄に励んでいくのがよいかと思います。
【iDeCoのメリット・デメリット】
iDeCoのメリットには、節税があります。支払った年の節税になるほか、運用時に利益が生じても税金はかかりません。
受け取るときも公的年金等控除という仕組みがありますので、税金の軽減ができる措置がとられています。こうした仕組みは通常の運用ではありません。この他、運用コストが低いものが多く、積立額も5000円からなど少額から可能です。
デメリットは、仮に52歳から加入した場合、61歳もしくは62歳からしか受け取りができません。ちょうど奥様の場合、定年の年齢と同じ頃のため、問題はないことでしょう。
ただ、途中で止めたいと思ったとしても、継続が前提になりますので、コツコツ励んでいく必要があります。
【つみたてNISAのメリット・デメリット】
つみたてNISAのメリットは、年間40万円までの資金をもとに、最長20年間積み立て運用した結果、増えた金額に税金がかからないということです。
奥様の場合は運用期間を10年程度から検討していくとよいでしょう。場合によっては、そのまま継続し、余裕資金で70歳ぐらいまで運用していくのもよいかもしれません。
つみたてNISAのデメリットは、仮に運用で損失が発生した場合に非課税の恩恵を受けることができないということ。また、途中で売却した場合には「再度同じ金額の投資を」といったことはできず、毎年40万円と決まっている枠内で残った分と次年以降の枠で運用をしていく必要があります。
景気の状況等を考慮しながら運用に努めていくべきですね。
運用で増やすよりも、早めの返済をおすすめする理由
なお、私が同じ状況であるならば、今手元にある1600万円と貯蓄、ないしはつみたてNISAで、2000万円などある程度資金が貯まったら先に融資を返済することを検討します。iDeCoは、老後資金対策と節税を目的に行います。
こうすることで、1.73%とやや高めの金利で支払う利息を大きく軽減できます。
つまり、運用をして増えるか減るかはそのときの状況で変わってきますが、利息は返済を早めるほど確実に軽減できるため、むしろそちらを優先した方がよいのではないかと思うのです。
もちろん、ご希望通り退職金で返済もよいと思います。ただ、老後資金は着実に貯める点を意識しつつ増やすのをご希望であれば、先に融資を返済し、入ってくる家賃をiDeCoやつみたてNISAの投資資金にあてる方がより効率的だと思います。ご検討ください。