唐十郎×杉原邦生×若村麻由美1969年初演!日本アングラの金字塔・『少女仮面』を上演!

2020年の幕開け、 シアタートラムにて 唐十郎作「少女仮面」を上演する。 1969年早稲田小劇場・鈴木忠志が主宰する早稲田小劇場に書き下ろされたもので、 のちに岸田國士戯曲賞を受賞。 唐十郎作品の中でも大変人気の高い作品。この戯曲を木ノ下歌舞伎の演出、 美術を手掛け、 自らKUNIOを主宰し、 今、 注目の演出家・杉原邦生が演出。 そして、 伝説の大スター・春日野八千代役を、 数々の演劇賞を受賞し、 充実した舞台作品の出演が続く、 若村麻由美が演じる。唐戯曲は初めての挑戦だ。

他の出演者には少女貝役に若手女優として映像のみならず舞台でも注目される木崎ゆりあ、 老婆役に無名塾出身のベテラン大西多摩恵、 ボーイ主任役に軽妙な演技で幅広く活躍する大堀こういち、 ボーイ役にはミュージカル「薄桜鬼」や「おそ松くん」で活躍する若手人気俳優井澤勇貴とフレッシュな新人水瀬慧人、 杉原作品への出演も多い、 武谷公雄、 田中佑弥、 異色の組み合わせの出演陣。

唐十郎の「少女仮面」が生まれてから半世紀、 50年。 日本の今はオリンピックを来年に控えて工事が進み、 気候変動の激しい中、 災害も絶え間なく起こっている。この作品の舞台は下界から隠れるように地下=アンダーグラウンド、 喫茶店「肉体」に住む人々。 時代は1969年から2020年へ。 肉体のありかを見失ったひとりの女の物語が、 リアルのありかを求めて漂流するわたしたちの今と未来を揺さぶるだろう。 衝撃を与えた時代を反映したこの戯曲は、 また新たな読み解きを経て、 とてつもなく魅力を放つ作品になるはずだ。

唐十郎(1973年 角川文庫 あとがき より)

廊下で昼寝をしていたら、 メリーポプキンズの『悲しき天使』で起こされた。 僕はこの曲の終わりに聞こえるバックの少女コーラスが大好きで、 それを耳にした時もそうだった、 判っきりと燃える町が見えたのです。

それは、 関東大震災の頃、 風呂屋の娘だった僕の母が、 ドンブラコと煮えくり返る熱湯の上に板っぺらを渡して、 行こか戻ろか思案にくれていたという話と一緒こたになりまして、 二日で書きなぐったのが「少女仮面」であります。

演出・杉原邦生のメッセージ

僕たちは当たり前のように自分の肉体が在り、 名前が有り、 社会的存在保証がある、 と、 思っている。 しかし、 それらが本当に〈ある〉とどれだけの人が言い切れるだろう。 いかに早く、 安く、 楽に他者とコミュニケートできるか。 そのことに一番の〈価値〉が見出され、 直接的コミュニーケーションが〈煩わしさ〉という汚名とともに地位を下げ続ける情報化社会の中で、 どうやら僕たち自身の〈ある〉という感覚すらも、 とても怪しく、 疑わしい〈情報=データ〉でしかないような気がしてくる。 元宝塚スター・春日野八千代は、 すべてをむさぼり取ろうとする少女ファンたちに自分自身を与え続けた結果、 己の肉体の在り処すらも見失ってしまった。 そんな彼女が彼女自身の〈ある〉を獲得するため愛と肉体を求めるその姿を、 ただの〈狂気〉と言い捨てるには、 あまりにも現代社会全体が〈狂気〉にまみれすぎているように思える。 唐十郎が1969年に生み出した『少女仮面』には、 現代(いま)だからこそ迫ってくる切実さが満ち溢れている。 今回はこの作品を、 現代を生きる僕たちの〈実在〉のための物語として、 クールかつスタイリッシュに描き出したいと考えている。

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