「脱・進学校」で躍進 小田和正母校校長が自伝刊行

刊行された「ぬくもり伝えて」

 全国屈指の進学校として知られる聖光学院中学・高等学校(横浜市中区)の校長工藤誠一さん(64)の自伝「ぬくもり伝えて 『脱・進学校』山手の丘の実践」(神奈川新聞社刊)が、刊行された。2018年12月から翌19年2月まで神奈川新聞で61回にわたり連載した「わが人生」を加筆・修正したもので、同校の躍進の理由を解き明かしている。

 同校の今年の東大合格者数93人は県内トップ、全国でも4位を誇る。近年は海外有名大への門戸も広がっているという。

 著書によると、実績の陰には、「脱・進学校」「開かれた学校」「学校に縛り付けない教育」の方針がある。受験勉強と直接結び付かない情操教育による生徒の文化的成熟度の上昇が結果的に、合格者数を押し上げたという。

 「進学校だから」という考え方にとらわれず、正規の授業内容や学年の枠を超えた講座の開催、学校行事やイベント、部活動などを重要視する筆者の考え方を明らかにしている。

 11年3月の東日本大震災の際に、同校の高校生からボランティアを募り被災地に派遣した思いを紹介。保護者らからは不安の声も上がったが、「大惨事の現実を肌で、目で、臭いで感じ、被災者を助けることは、同時代を生きる者として大切だ」との信念があった。16年まで続いた教育実践は多くの教訓を育んだ。

 また、14年の同校の新校舎竣工(しゅんこう)記念に、卒業生のシンガーソングライター小田和正さんを招いたコンサートの際のエピソードなども掲載されている。

 四六判、212ページ、税込み1650円。書店、新聞販売店で扱っている。問い合わせは、神奈川新聞社出版メディア部電話045(227)0850。

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