そろそろ雪山シーズンに向けて冬支度
あっという間に終わってしまった夏山シーズン。名残惜しさはありつつも、美しい白銀の世界を楽しみにしている人も多いのではないでしょうか。
編集部員もその一人。冬に向けて雪山装備を整理しておこうかなとアイゼンを引っ張り出してみると…
「ん?」
「サビてるぅーーーーーーー!!!」
最後に使ったのは今年の5月。帰宅後にきちんと洗ってしっかり拭いたはずだったのに、この有り様です。考えてみれば、3年くらい使っていますが爪を研いだこともありません。
「このサビ、どうしたらいいの?」
「爪の研ぎ時って?」
そうだ、メンテナンスのプロに聞いてみよう!
「アイゼンはどんな風にメンテナンスするのが正解?」そんな疑問を解決するべく、山梨県甲府市にあるアウトドアショップ『エルク』へ。
『エルク』はただの登山用品店ではないんです。“エルクメンテナンス修理サービス”なるものがあり、エルクで購入したアイテムはもちろん、そうでなくても、テントや登山靴からウエア類まで、さまざまな山道具のメンテナンス修理が可能。「大切な道具たちをより一層長く、大切にお使いいただきたい」という想いから始めたのだそう。
そんな『エルク』で、アイゼンを長く愛用するためのメンテナンス方法を聞いてきました!
教えてくれたのは、エルク店長・中込さん
こんなときどうする? アイゼンのメンテナンス方法を教えて!
編集部 荻原
久々に出してみたらサビていて。今まで一度も爪を研いだこともないんですが、このアイゼンの状態はまずいですよね…?
中込さん
・・・
編集部 荻原
メンテナンスしていなくて怒られるかも…ドキドキ
中込さん
このくらいなら、研がなくても問題ないですね。サビも取れますよ。
編集部 荻原
そうなんですか!? てっきり最悪の状態かと思いました。
このサビはどうしたらいい?
編集部 荻原
サビてしまったときは、どうしたらいいでしょうか? タオルで拭いても落ちなくて。
中込さん
多少のサビなら、また雪道を歩くと落ちると思いますが、気になるようなら研磨剤を使うときれいになりますよ。
基本は、アイゼンを使用して洗った後にしっかりと乾燥させて、サビないようにすること。
編集部 荻原
パーツも外して乾燥させた方がよかったのでしょうか?
中込さん
各パーツを雑巾やタオル等でしっかり拭いて水気を取り、風通しのいい場所で乾燥させれば、分解までしなくてもいいと思います。
自分の命を守るギアとして愛着を抱くために、分解して構造を理解するというのも重要かもしれませんね。
編集部 荻原
あらかじめサビ止めスプレーやオイルを塗っておくのもアリですか?
中込さん
サビ止めも有効です。無溶剤のシリコンスプレータイプがおすすめですよ。金属用のサビ止めスプレーであれば、金属部分を重点的に。昨今のアイゼンは樹脂部分が多くありますが特に気にせず、かといってかけすぎにも注意です。
雪山シーズン前に毎回爪を研ぐべき?
編集部 荻原
爪を研ぐべきタイミングもイマイチ分からないんです。
中込さん
もともと尖っている爪の先が、こんな感じで削れて丸くなってしまっていたら研ぐ必要があります。
中込さん
ただ、亀裂や金属疲労が見受けられる場合や、あまりにも刃先が丸くなっていて、アイゼンの本来の効力を発揮しないような状態なら、買い替えをおすすめします。
編集部 荻原
爪を研いだことないんですが、難しそうですよね。
中込さん
そんなことないですよ、実際に研いでみましょう!
【メンテナンスのプロ直伝】アイゼンの研ぎ方&コツ
準備するものは、ヤスリとグローブの2つだけ。いずれもホームセンターなどで手に入ります。
中込さん
ヤスリではなく、グラインダー(研削盤)を使う人もいるようですが、熱で金属が痛んでしまうのでおすすめしません。
小さいヤスリは、細かな部分を研ぐときにあると便利です。研いだ爪で自分の手を傷つけないように、グローブは厚手のものがいいですね。
まずは、アイゼンのパーツをすべて外します。
アイゼンをしっかり固定して、1本ずつ爪を研ぎます。
中込さん
硬い台の角などに当てて固定すると研ぎやすいですよ。
爪の両サイドを均等に研いで、先を尖らせていきます。
中込さん
ヤスリは爪の先に向かって一方向に動かし、基本的には押すときに研ぎます。
中込さん
面の部分を削ってしまうと爪が薄くなってしまうので、研ぐのは爪のサイドだけです。
[左]が研いでいないアイゼン、[右]が中込さんに研いでもらったアイゼンです。写真では分かりにくいですが、研いだ爪は鋭さが復活。
編集部 荻原
これだけですか!?
中込さん
思っていたより簡単でしょ?
編集部 荻原
ヤスリで削るだけなら、できそうな気がしてきました!
【実践】簡単3ステップ! アイゼンのメンテナンスしてみた
中込さんに教えてもらった方法で、実際にアイゼンをメンテナンスしてみたいと思います。
早速ホームセンターへ行き、メンテナンスグッズを購入。種類が豊富で悩みましたが、今回はこちらの3アイテムに。手袋は軍手を代用。別売りのヤスリの柄を含めて合計4,000円弱でした。
【左】ニコルソン 万能やすり(平-21)【中】ソフト99 ちょっと塗りエイド シリコーンオイル
【右】ヤナセ 液体研磨剤 サビ取り・汚れ落とし用
ステップ① サビを落とす
柔らかい布に研磨剤をつけて、こするように磨きます。
「本当にこれでサビが落ちるのか?」 なんて疑いながら見てみると…
拭いただけで、頑固なサビも落ちているではありませんか!
ステップ② 爪を研ぐ
教えてもらった通り、爪先に向かって押すときに研いでいきます。研ぐこと自体は簡単ですが、左右対称に削りながらきれいに尖らせていく繊細な作業は、意外と根気がいりました。
そして、丁度いい固定台がなかったこともあり、右利きだと爪の左側面を研ぐのにやや苦戦します。
ステップ③ サビ止めオイルを塗る
仕上げにサビ防止のシリコーンオイルを金属部分に塗っていきます。マニュキアのようにキャップが刷毛になっているタイプは、非常に使い勝手がよかったのでおすすめ。細かい部分にもしっかり塗れました。
メンテナンス完了!
使い込まれてくたびれたアイゼンが…
なんということでしょう! 輝きと鋭さを取り戻し、生き生きとしているではありませんか。
なんだか楽しくなってきたので、ついでに6本爪の軽アイゼンもメンテナンス。
新品同様とはいきませんが、まだまだ頼れる相棒に。
しっかりメンテナンスして、長く愛用しよう!
初めてのメンテナンスということで、12本爪アイゼンのメンテナンスが終わった頃には3~4時間が経過していました。夢中になってやっていたのですが、終わったときには結構ぐったり(笑)。
その一方で、自分でメンテナンスをすることで、一気にアイゼンへの愛着が沸き、これからも大切に使おうという気持ちが芽生えてきました。中込さんが話していた「自分の命を守るギアとして愛着を抱くために、構造を理解することも重要」とはこのことかと、納得したのでした。
いざという時の守護神アイゼン。転倒・滑落防止の役割をしっかり果たしてもらうためにも、ぜひ雪山シーズン前に状態を確認して、みなさんもお手入れしてみてくださいね! 思いのほか簡単で、ハマってしまうかも!?
忙しい人必見! エルクのメンテナンス代行サービスが便利
「メンテナンスする時間がない」「自分でやる自信がない」という人もご安心を。エルクではアイゼンのメンテナンス修理も行っています。
形状・状態にもよりますが、4,000~6,000円程度でメンテナンスしてもらえるので活用してみては。なんと、ギアのメンテナンスだけでなく保管もしてくれるんです!
▼エルクのメンテナンス代行サービスについてはこちら
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