【ティップランエギング超入門】現役船長がタックル・釣り方を詳しく解説。 三重県が発祥の「ティップランエギング」。その人気に火が付き、現在では全国的な広がりを見せつつあります。キャスティングで狙うエギングとは釣り方が異なるティップランエギングですが、現役の船長がタックル・釣り方を解説していきます。

ティップランエギングとは?

ティップランエギングとは、船を“どてら”で流しながらエギを落とし込み、船が流れるのを利用してアオリイカを狙うボートエギングのことを指します。

ティップランの名前の通り、常にラインテンションが張った状態を維持し、ロッドのティップでアタリを捉えることが特徴です。

アオリイカの小さなアタリを拾っていくことが求められ、まさに「掛けて獲る」という爽快感を味わうことができる釣りです。

ターゲットはアオリイカ

様々な種類のイカが釣りのターゲットとして親しまれていますが、ティップランエギングのターゲットとなるのはアオリイカです。

「イカの王様」と称されることもあり、食味はもちろんのこと、イカの中でも大型になるので引き味が強烈で釣り応えも抜群。

アオリイカは多くの個体が春に産卵シーズンを迎え、孵化した個体は夏~秋にかけて岸寄りの浅場で成長し、秋~冬にかけて水温が安定する深場に移動します。

ティップランエギングでは、この深場に移動していく(した)アオリイカがターゲットとなります。

ティップランエギングのタックル

ここではティップランエギングに必要なタックルを解説します。

ロッド

エギングロッドでもできないことはありませんが、繊細なアタリを捉えるには、やはりティップランエギング専用のロッドがベストです。

「如何にアタリを逃さず捉えることができるか」が大切なので、ロッドによって釣果が変わる釣りといえます。

本格的にティップランエギングに挑戦したいという方は、専用のロッドで臨みましょう。

リール

リールはショアエギングと同じもので結構です。ダイワだと2500番(LTシリーズは3000番)、シマノだとC3000番のスピニングリールがベストです。

また、パワーを必要とする釣りではないので、ジャーク時に発生する糸フケを素早く巻き取れ、回収作業が早いハイギアタイプのリールを選ぶと良いでしょう。

PEライン

PEラインは、0.6号が基準となる太さです。

30~40メートル程度の深場を攻めることも多く、0.8号以上だと水の抵抗を受けすぎて底を取りづらくなったり、エギの動きが悪くなったりします。

かといって、0.4号以下にすると根掛かりをしたときに高切れが多発するので、ビギナーの方には推奨できません。

また、少し値段は高くなりますが、水抵抗の少ない8本撚りのPEラインをおすすめします。

ショックリーダー

ショックリーダーには、初期伸度が低く、根ズレにも強いフロロカーボンを用います。

0.6号のPEラインを使うと仮定した場合、ショックリーダーの太さは2号が基準。

リーダーの強度がPEラインの強度を超えると、根掛かりした際に高切れを起こしてしまいます。

感度・耐摩耗性に優れているため、各社から発売されている硬めのリーダーがおすすめです。

エギ

ティップランエギングでは、ティップラン専用のエギを使うことがベストです。

ショア用のエギにシンカーを付けて使うこともできますが、やはり専用に開発されたエギの方がアクションとスイム姿勢が良いので釣果が向上します。

エギのサイズは、アオリイカのサイズが小さい10月中旬頃までは3号、それ以降は3.5号(30グラムのもの)が中心となります。

カラーに関しては、水温が高い時期やアオリイカの活性が高いときは、あまり釣果の差が生まれません。

しかし、低水温期や活性が低い状況では特定のカラーにアタリが集中する場合もあるので、できればダーク系・ブライト系・夜光系などを揃えておくと良いでしょう。

ちなみに、個人的にはブルー系のカラー、夜光、赤テープのエギを重宝しています。

シンカー

専用のエギを準備していても、様々な水深や潮流に対応するためにはシンカーが必要です。

シンカーはそれぞれのエギの形状に合ったものを選び、10~30グラムまでを準備しておくと大抵の状況に対応できるでしょう。

ティップランエギングの釣り方

ティップランエギングの釣り方は、オカッパリやボートキャスティングとは大きく異なります。

基本となる釣り方を解説します。

エギの投入

まずは、エギを底まで落とし込んでいきます。

風が強くて船が速く流される場合は真下に落とし、無風で船が流れない場合はキャストして沖に投入しましょう。

どてら流しで片舷横1列に並んで釣りをするので、おまつりしないように両隣の人のライン角度に注意してください。

誘い(シャクリ)

エギが着底したら根掛かりしないよう、すぐに誘いの動作に入ります。

ワンピッチジャークで3~10回程度シャクり上げ、底から1~5メートル程のレンジを狙います。

時折激しいシャクリを行う方を見かけますが、糸フケがティップに絡んでロッドを破損させる原因にもなり兼ねないので、ロッドを10時以上に立てないように気を付けましょう。

誘い(ステイ)

シャクった後は、エギをフォールさせずにそのまま5~10秒ほどステイさせます。

実際には、このとき船は潮や風で流されているのでエギが水平移動しているわけですが、この水平移動のときにアオリイカがエギに抱き着いてきます。

このときロッドの角度を下げすぎると波の影響でアタリがボケやすくなるので、ロッドの角度は水平または水平より少し上にしておくとアタリが分かりやすくなります。

これでアタリがなければ再びエギを底まで沈めて、同じ動作を繰り返します。

アワセ

アオリイカのアタリには幾つかの種類があります。

①少し曲がっているティップが「グンッ!」と、引っ張り込まれる。

②ラインテンションが急に抜けて、少し曲がっているティップが真っ直ぐになる。

③「トンッ……」と、何かに触れたようにティップがほんの少しだけ揺れる。

この3つが主なアタリですが、即座にアワセを入れないとエギを離してしまったり、エギを横抱きしている場合は上手く掛からなかったりするので、違和感を感じたら素早くアワセを入れるようにしましょう。

ファイト

上手くフッキングまで完了したらアオリイカとのファイトに移りますが、ラインテンションを絶対に抜かないようにしましょう。

カンナと呼ばれるエギの針は「かえし」が無く、ラインテンションを抜くと簡単にバレてしまいます。

事前にドラグ調整をきちんと行い、アオリイカが走ったらロッドの角度を一定に保ったままドラグを滑らせ、走りが止まったら一定のスピードでリールを巻いて距離を縮めていきましょう。

しっかりとドラグを調整を行い、落ち着いてやりとりをすれば基本的にバレることはありません。

取り込み

アオリイカが水面まで浮いてきたら、いよいよ取り込みです。

アオリイカは体内に取り込んだ水を一気に噴射してバックで逃げようとするので、取り込みはアオリイカの後ろ側から掬うようにします。

また、イカ墨を噴き出すこともあるので、取り込み時は漏斗(水・墨を噴射する器官)を船側に向けないようにして、イカ墨が自身または同船者に掛からないようにしましょう。

釣果アップの秘訣

ビギナーでも楽しめるティップランエギングですが、みんなで同じ船から同じポイントを狙っても、アングラーによって釣果に大きな差が生まれます。

同じ船の上で同じエギを使い、同じように誘っているのに、ダブル・トリプルスコアになることは当たり前……。

ここでは、ティップランエギングの釣果を左右するコツを解説します!

エギのウエイト調整

ティップランエギングでは、エギのウエイト調整が非常に重要です。

ウエイト調整を適切に行わないと、風や潮の影響でエギの姿勢が崩れ、アオリイカが抱きにくくなってしまいます。

ベストなウエイトは言葉で表しにくいのですが、「ちょうどいい具合にラインが少しずつ払い出される」感覚を掴んでください。

ビギナーの方はウエイトの判断が難しいと思うので、その都度船長に聞いたり、よく釣っている人を参考にしたりすると良いでしょう。

アタリを確実に拾う

オカッパリやボートキャスティングと比べ、慣れれば圧倒的にアタリが取りやすいティップランエギングですが、場合によってはそうではない日も多々あります。

低水温期や活性が低いときはアタリも小さくなりやすく、とくに大型になればなるほどその傾向が顕著です。

また、これはアングラーサイドの問題ですが、波が高くて船の揺れが大きくなるとアタリを取り難くなります。

正直、アタリの取り方に関しては「習うより慣れろ」と言うしかありませんが、アタリが取れるか否かは釣果に直結します。

ジャークで誘った後は、わずかなアタリも逃さない気持ちでティップの動きに集中しましょう。

オカッパリでは狙えない大型も!

ショアのエギングでは、「秋=小型・中型の数釣り」のイメージがありますが、ティップランエギングは秋でも良型のアオリイカを狙うことができます。

シーズン初期こそ小型が中心となりますが、最盛期にもなれば1キロオーバーは当たり前のように狙えるので、釣り心地も抜群。

数釣りを楽しみながら、大型も狙うことができる。それがティップランエギングの魅力のひとつだと思います。

ティップに現れる小さなアタリを掛け合わし、ロッドに重量感が乗った瞬間を1度味わうと、病みつき間違いなしですよ!
画像提供:岩室拓弥

筆者の紹介

岩室拓弥
釣具店・釣具メーカー勤務を経て、現在は福岡市東区箱崎港から出船している遊漁船「エル・クルーズ」の船長。

職業柄オフショアがメインとなっているが、元々は陸っぱりがメインでメバリング・エギングなど様々な釣りの経験も豊富なマルチアングラー。

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