住民癒やす銭湯復活 富山「入舟湯」2年3カ月ぶり 紙屋さん引き継ぐ

入舟湯の経営を引き継ぎ、浴槽に湯を沸かしながら笑顔を見せる紙屋さん

 富山市長江本町の銭湯「入舟湯」が今月、約2年3カ月ぶりに営業を再開した。近くの同市西長江4丁目で、かみや釣具店を営む紙屋郁子さん(75)が前オーナーの要望に応え「地域の憩いの場を復活させよう」と経営を引き継いだ。閉店を惜しんでいた住民が再開を喜んでおり、紙屋さんは「銭湯業は素人だけど、癒やしの場になるよう頑張りたい」と話している。 (報道センター・石川雅浩)

 入舟湯は1958年に開業。井戸水で沸かす滑らかな湯が人気で、常連客からは「せっけんがなくても肌がすべすべになる」と評判だった。前オーナーの井田豊之さん(64)が体調を崩したため、2017年6月末にのれんを下ろした。

 今年に入り、紙屋さんは井田さんから「お風呂を引き継いでくれないか」と相談を受けた。釣具店の他に別の事業に取り組めるか悩んだが、戦後に公衆浴場が人気だった思い出や復活を望む声もあり、6月に引き受けることを決めた。

 釣具店を切り盛りする長男の弘次さん(52)と共に、ボイラーの使い方や浴室掃除のやり方などを学び、外壁や浴室の仕切り板などを塗り替えた。入舟湯の名前や脱衣ロッカー、風呂おけはそのまま。風呂の種類も閉店前と同じで、湯温44度の白湯、気泡風呂、ショウガやラベンダーなどの日替わり薬湯をそろえた。

 今月1日にオープンすると、なじみの客らが早速、訪れた。「よく復活させてくれた」「これからも長く続けてほしい」との励ましの言葉を受け、紙屋さんは「たくさんの人が集まり、ゆっくりとくつろげる空間にしたい」と笑顔で話した。

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