パが7年連続日本一、セとの違いは? 専門家が指摘する「ドラフト戦略」「育成」

ソフトバンクの2010年育成ドラフト同期の甲斐拓也(左)と千賀滉大【写真:荒川祐史】

パ・リーグ球団が7連覇中も…セ・リーグと「野球の違いはない」!?

■ソフトバンク 4-3 巨人(日本シリーズ・23日・東京ドーム)

 ソフトバンクの3年連続日本一で終了した今年の日本シリーズ。パ・リーグ2位から頂上決戦にたどり着いたソフトバンクは、23日の第4戦も4-3で巨人に勝利し、4連勝と圧倒的な強さを見せた。

 セ・リーグ球団が日本シリーズで勝ったのは、2012年の巨人が最後。その後は楽天、ソフトバンク、ソフトバンク、日本ハム、ソフトバンク、ソフトバンク、ソフトバンクとパ・リーグが“7連覇”中。2005年に始まった交流戦も過去15年のうち14回、パ・リーグが勝ち越している。近年は両リーグのレベルの違いも指摘されるが、本当に力の差はあるのか。ヤクルト、日本ハム、阪神、横浜の4球団で捕手としてプレーし、昨季まで2年間はヤクルトでバッテリーコーチを務めた野球解説者の野口寿浩氏は「ドラフト戦略」と「育成力」が両リーグの違いになっていると指摘。「野球の違いはないと思います」と言う。では、いったい何が違うのか。

 今年もパ・リーグのソフトバンクが圧倒的な強さを見せた日本シリーズ。野口氏は「巨人は今年のペナントレースは圧倒的な強さではなく、最後の最後に強さを見せて勝ったので、昨年までの広島とは違いました。他を圧倒して勝った感じではない。それにしても、セ・リーグで強さを見せた巨人がこんなにあっさり負けるのかという印象はありますね」と振り返る。その巨人を圧倒したソフトバンクがペナントレースでは2位だったとあって、「レギュラーシーズンで1位になった西武は本当にすごいとも改めて思いました」と率直な胸の内を明かした。

「ドラフト戦略がうまくて、育てる環境がある。どんどん選手層が厚くなる」

 では、両リーグにはどんな違いがあるのか。セ・リーグは野球を見直す時に来ているのか。昨年までヤクルトのバッテリーコーチを務め、2017年は2軍、2018年は1軍を現場で指導した野口氏は「セ・リーグとパ・リーグの野球の違いはないと個人的には思います。ちょっと前までは緻密な野球のセ・リーグ、豪快な野球のパ・リーグというのがあったかもしれませんが、今はそれはないと思います。野球の質は同じだと思いますが、いい選手を多く抱えているのはパ・リーグかなと。セ・リーグにもいい選手を抱えているチームはありますが、パ・リーグの方が層が厚い」と分析する。

「やはり、ドラフトでも将来有望と見られるアマチュアの選手がパ・リーグに入る機会が多いですよね。ソフトバンクとか日本ハムを見ていると、ドラウト戦略がうまくて、育てる環境がある。どんどん選手層が厚くなる。今回の日本シリーズでソフトバンクを見ていてもそう感じましたし、西武も毎年誰かがFAで抜けても優勝争いができる。いい選手がいて、しっかり育つ。これに尽きます。

 今のソフトバンクを見ると、野手で補強で外から来たのは内川と川島くらい。あとは助っ人ですが、これはどのチームも同じです。内川と川島が外れた第4戦では、スタメンがみんな生え抜きの選手でした。投手陣も同じですよね。ドラフトから育成の戦略が非常にいい。いい選手をドラフトで獲って、いい育成方針がある。長期的な展望で作ってきたチームが今、花開いている。そう見えます」

 このまましばらくパ・リーグ優勢の流れが続くのか。それとも、セ・リーグが巻き返すのか。交流戦や日本シリーズでの熱い戦いに期待したいところだが……。(Full-Count編集部)

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