大阪のホテルが供給過多? ロイヤルパークは「都会のオアシス」のラウンジで対抗

都市部を中心にホテルが激増する中、ホテルにとって“差別化”は重要なワードです。他にはないコンセプトを打ち出し、選んでもらえるホテルになるという考えは理解できます。

客室数ベースでいえば増加するホテルの多くは宿泊特化型のホテル。宿泊に特化したホテルといえばビジネスホテルは定番ですが、「どこも同じような雰囲気」「低料金でもせっかく泊まるのならばテンションが上がるようなホテルがいい」という声は訪日外国人旅行者を中心に根強くあります。


ライフスタイルホテルが話題に

ホテルのセグメンテーションは価格帯によるものが一般的です。利用者からすると「この料金を出せる人はここへ泊まってください」「予算のない人はここへ泊まってください」と言われているようで、ある意味わかりやすいといえます。

ところが、最近“ライフスタイルホテル”というワードがホテル業界で話題になっており、価格帯などではなく趣味や嗜好などにフィーチャーしている点に特色があります。ロック音楽をテーマにしたホテル、環境コンシャスなテーマのホテルなど多様。

ホテルマンといえばダークスーツ姿が定番ですが、ライフスタイルホテルではジーンズなどカジュアルな姿のスタッフも時折見かけます。インテリアも特色があり宿泊+αの楽しさがあります。ライフスタイルホテルに必須なのは皆が集えるパブリックスペース。時には宿泊者が客室を離れ仕事を持ち込み、時にリラックスするラウンジであり、街中の人々が気軽に利用できるカフェやワーキングスペースにもなり、朝は宿泊者の朝食会場となります。

ホテルのラウンジでラグビー観戦

ライフスタイルホテルといえば先日印象に残る出来事がありました。大阪・北浜駅直結という立地で6月に開業した「ザ ロイヤルパーク キャンバス 大阪北浜」でのこと。偶然、ラグビーワールドカップの日本対南アフリカ戦の日で、ホテル2Fのレセプションに続く「CANVAS LOUNGE」で試合放映が催されるといいます。DJブースもあるポップなラウンジはまさにライフスタイルホテルのイメージですが、この日は常設されている120インチに加え165インチのスクリーンが設置されました。

開始時刻が近づくと人々が押し寄せ、試合が進むにつれラウンジは大いなる盛り上がりをみせましたが、そこはさすがのホテル。カジュアルな雰囲気にあっても調度品や内装は高い質感を放ちます。ゆったりしたソファや余裕ある動線で、熱気の中にもどこかリラックスした空気。通常でもドリンク・スナック共に全て500円で提供されますが、いつもにも増して広々したカウンターが多忙を極めたのは言うまでもありません。

クオリティの高い客室

ところで、ザ ロイヤルパーク キャンバス 大阪北浜は、その名のとおり「ロイヤルパークホテル」のブランドで大阪初出店となります。東京の人にとってロイヤルパークホテルといえば、フルサービスのシティホテルのイメージでしょうか。大阪でシティホテルといえば、リーガロイヤルホテルや阪急阪神ホテルの牙城であり、当初ロイヤルパークホテルが大阪出店のニュースを聞いた時、意外だった記憶があります。蓋を開けてみるとフルサービスではなく宿泊特化型、しかもライフスタイルホテルと聞いて納得したことを覚えています。

偶然にも南アフリカ戦と重なり急遽のラウンジ取材となりましたが、仕事が残っていたので早めに客室へ戻りテレビ観戦しつつパソコンへ向かいました。テレビはブームともいえる壁付けタイプ。客室のスペースを少しでも広くということでしょうが、壁付けゆえ向きが変えられないケースもちらほら。しかし、こちらは壁付けにして可動式のタイプ。高級ホテルで時々見かける仕掛けです。ベッドをはじめとした調度品のクオリティはかなり高く、水回りも使い勝手の良さに加えセンスよくまとめられています。

大阪のホテルが料金下落傾向?

高級ホテルでもここに劣るクオリティの客室を見かけることもあり、ホテル評論家的にも評価できる内容のホテルでしたが、この日の料金がかなり安かっただけにコスパを重視する視座からも高評価となりました。調べてみると通常1泊8,000円程度からリザーブ可能。ホテルの料金変動はいまや常識であり、その変動幅が2倍3倍というケースも珍しくありませんが、こちらは高くても1万3,000円ほどの設定のようです(2019年10月時点、1名1室の場合)。ここ数年、他の大都市同様に大阪のホテル料金も高騰の一途を辿っていたので面食らいました。

翌日スタッフへ取材してみたところ「京都に続き大阪もホテルが増えている」といい、「数多くのホテルの中でも、コンセプトもハードも他のホテルに負けない自信があるだけに、まずはトライアル料金で多くのみなさんに利用していただきたい」という考えからの料金設定だといいます。もちろん料金は需給バランスで決まるしカテゴリー等による差異はありますが、供給過多による全体的な稼働・料金下落傾向は業界で話題になりつつあるようです。

ホテルラウンジは都会のオアシス

ところで このホテルのコンセプトは“FUN、LOCAL、CONNECT”。土地に根ざしながら人とのつながりのきっかけとなるイベントなどを積極的に催していくといいます。宿泊ゲストはもちろん、周辺住民をはじめ様々な人々が交流できる場を目指すとのこと。ラグビーワールドカップ南アフリカ戦の試合放映は、まさにホテルとのマッチングイベントだったといえるでしょう。

ホテルスタッフによると、北浜エリアでこのような規模・スペースは希有といいますが、ドリンク1杯のオーダーでゆったりとしたホテルクオリティの時間が過ごせるのは都会のオアシス。仕事にクラクゼーションに、都会の隙間時間にライフスタイルホテルの存在感は極まります。

余談ですが、CANVAS LOUNGEのコーヒーは、3種の豆を自分好みにブレンドして自らの手で挽き淹れるもの。ホテルで多く見られるコーヒーマシンとはひと味違った味わい。宿泊者は無料で利用できます(宿泊者以外は500円)。体験型ホテルなんていうのも流行っていますが、これもひとつの体験でしょう。

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