難しい「専門里親」 一変した関係、よぎる不安 【連載】家族のかたち 里親家庭の今(7)

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 「貧困、離婚、虐待、障害。子どもが預けられる理由はさまざまです」。県内に暮らす啓子さん=70代、仮名=は定年後に里親に登録した。里親の中でも特に難しいとされる「専門里親」。これまで中高生を10人以上受け入れてきた。
 啓子さんは「3歳までに愛情を受けた子は必ず立ち直れる。でも、中学生はすでに自我が形成され、根本的な育て直しは困難」と打ち明ける。うまく関係を築いていたかと思うと、あっさりと裏切られる。正しい選択をする力が乏しく、つい悪い道に引き込まれてしまう子もいる。
 啓子さんは数年前に預かった女子高生のことが、今もずっと心に引っ掛かっている。
 それまで預かった中で「1番手の掛からない子だった」。母親の育児放棄(ネグレクト)により児童養護施設に預けられていたところ、本人が里親家庭で暮らすことを望み、啓子さんの家にやって来た。規則正しい生活を送り、勉強も部活も一生懸命。スマートフォンの使用も「通話だけ」というルールを設け、彼女もそれを守っていた。
 夏休みに入り、状況が一変した。部活の試合で県外へ遠征。スマホが自由に使える環境となり、そこから「いい子」の姿が崩壊していく。遠征先でスマホを通じて知り合った人に会いに行き、それがばれた。教員に怒られ、当然、啓子さんにも連絡が来た。里親の前ではいい面だけを見せたかったのに、悪い面を見せてしまった…。そんな罪悪感からか、帰宅後は目を合わせず、態度はよそよそしくなった。
 その後、家に帰らない日が増え、児童相談所の判断で里親委託は解除された。わずか5カ月。「またご飯でも食べにおいで」。彼女の去り際、啓子さんはそのひと言が言えなかった。
 彼女の詳しいその後は、分からない。「しっかりと支えてくれる人に巡り会ってほしい」。そう願う一方で、ある胸騒ぎが消えずに残っている。
 「彼の時と似ている。同じような道を歩んでしまうのではないか」


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