【ルヴァン杯】川崎GK新井、PKセーブ 30歳の大仕事

【札幌-川崎】PK戦で見事にセーブし優勝に導いたGK新井

 今度こそ万事休すか、という場面まで追い込まれても、川崎のGK新井はひるむことなく自分の仕事場へ向かった。

 先蹴りのPK戦は4-4で相手の5人目。決められれば敗退が決まるが「開き直れる分、心理戦では自分の方が有利。相手の表情がこわばっていた」。キックの瞬間まで動かず、助走の角度や足首の向きに目を凝らす。右へ跳ぶと決めたら迷わない。完璧なセーブで五分に戻し、続く6本目も止めて試合を決めた。

 延長前半の3失点目直後にも強心臓ぶりを発揮している。「憲剛さんに言うやつがいなかったから、俺の役割かなと。このまま終わりたくなかった」と落胆するベテラン中村を必死に鼓舞し、再び前を向かせた。

 2013年加入で在籍7年目の30歳。今秋に先発の座をつかむまで、クラブの栄光と挫折をベンチから見守ることが多い控えGKだった。

 MVPも獲得し、「上に行くんだという気持ちを毎日持ち続ければ、神様が見てくれている」と新井。リーグ屈指のタレント軍団で日の当たらなかった男がクラブを救い、歴史に名を刻んだ。

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