■「いだてん」にも登場
富山市大町の尾崎秀男さん(88)は、陸上で五輪に出場した恩師との思い出が詰まった棒高跳びの棒を今も大切にしている。恩師はNHK大河ドラマ「いだてん」にも登場した野口源三郎(1888~1967年)。尾崎さんはスポーツに打ち込んだ大学時代を振り返りながら、来年の東京五輪で日本選手が活躍する姿を期待している。(報道センター・小林光里)
尾崎さんは小学生時代から体操が得意だった。東京教育大(現筑波大)に進んでからは全国大会で上位に入るなど活躍した。
同大では体育教師を目指し、体育学部に所属。1920年のアントワープ五輪で十種競技に出場した野口が当時教授を務めており、尾崎さんは授業で棒高跳びや走り幅跳び、やり投げなどを教わった。
野口は学生たちから「源ちゃん」の愛称で親しまれ、気さくな人だったという。尾崎さんは「定年が近い年齢だったけど、自ら投げて走って手本を見せてくれた」と話す。
大学卒業後、体育教師になった尾崎さんは、県内の中高生らを指導してきた。野口が口癖のように言っていた「難しいことを優しく、優しいことを深く、深いことを広く」という言葉を心に留め、自ら手本を見せる恩師の姿勢を受け継いだ。
尾崎さんの自宅には、野口が手を触れて指導してくれた棒高跳びの竹製の棒が4本ある。3本は倉庫に保管し、1本は自宅の階段に手すりとして取り付けている。足腰が弱くなった最近では、階段を上り下りする際に必ずつかまっている。
「いだてん」を機に学生時代を思うことが増えた尾崎さんは、来年の東京五輪を心待ちにしている。「特に体操や陸上が楽しみ。日本選手にはメダルの獲得にとらわれず全力を尽くしてほしい」と話している。