「エリアまたぎ」垣根解消を 交通IC利便性向上へ連絡会

JR、私鉄各社の経営幹部や神奈川、静岡両県の議員らが向き合った連絡会の会合=21日午後、衆院議員会館

 JRの東日本と東海で交通系ICカードの利用に制約がある「エリアまたぎ」問題の解消を目指そうと、神奈川と静岡の国会・地方議員がJR幹部らとの連絡会を立ち上げた。大半が東日本エリアの県内では、東海の管轄となる御殿場線で利便性向上に一歩前進する動きがあるものの、抜本的な改善は見通せていない。関係者は新たな枠組みでスクラムを組み、東京五輪に向けて機運を盛り上げたい考えだ。

◆御殿場線沿線、要望根強く

 近隣のエリアまたぎは、JR東日本のICカード乗車券Suica(スイカ)と東海のTOICA(トイカ)がエリアを越えて利用できない問題。他社のエリアまで乗車すると自動改札機が対応せず、有人の窓口や専用精算機での支払いが必要になる。御殿場線では起点の国府津駅のみスイカエリア、下曽我駅からトイカエリアに分かれており、同線利用者を中心に改善を求める声が根強い。

 両社などは2021年春からの改善策として、▽エリアをまたいだIC定期券の発売▽トイカエリアの国府津駅までの拡大-を9月に発表。ただ、定期券以外の普通乗車に対応するめどは立っていない。「運賃計算の範囲が大幅に広がり、自動改札の処理速度に技術的課題があるため」(JR広報担当者)という。

 利用者にとって問題は深刻で、これまでも神奈川と静岡の地方議員らが沿線ごとに団体をつくって改善するよう声を上げてきたが、問題の解消には至らなかった。

◆現状打破へ直接要望

 こうした現状を打破しようと、21日に両県の議員や自治体関係者でつくる「JR・私鉄沿線市町利便性向上対策連絡会」が初会合を開催。JR東日本と東海をはじめ、小田急電鉄、伊豆急行、伊豆箱根鉄道の経営陣を招き、エリアまたぎ問題のほかバリアフリー対策や乗り継ぎ接続の改善などについて直接要望した。

 JR側はIC定期券の発売を「第一歩」とした上で、エリアまたぎの解消は「いろいろな制約がある」(東海)、「さらに何ができるか検討したい」(東日本)などと説明。直ちに解決に結びつく回答はなかったものの、継続的に会合を開催することで一致した。

 連絡会の副会長に就いた自民党の牧島かれん氏(衆院神奈川17区)は「関係者が一同に集まる場ができた。課題を共有して解決につなげたい」と意気込む。

 御殿場線沿線自治体の議員でつくる議連代表で、山北町議会の児玉洋一副議長は「経営陣に直接声を届けられるのは大きい。関係者間で具体的な話し合いをしていきたい」と強調。地元や静岡も競技会場となる自転車ロードレースで国内外から観戦客が訪れる東京五輪までの“夢の実現”に期待を寄せている。

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