【おんなの目】 花火が上がる

 人と話していて難しい話になると、途中から私の頭の中に花火が上がる。ヒュールル、ドーンと黄色や緑の花火が炸裂する。聞いているふりをしているが、とうてい話には付いていけていない。上がり続ける花火を見ている。「聞いているの?」とソプラノで言われて正気に返る。花火は消えて頭の中は暗闇。あいまいに微笑んで、年の功で切り抜けて、必死で話の筋を追う。

 
 先日、私の頭に打ち上げ花火がボンボン上がった。高校生を持つお母さん方のおしゃべり会。何故か私も加わってコーヒーなんぞを飲んでいた。

 
 二〇二〇年度をもって、現在多くの大学で採用されている「センター入試」は廃止され、新たな「大学入学共通テスト」が始まるという。高校現場では新しい「学習指導要綱」が実施。国語授業が「論理国語」「国語表現」「文学国語」「古典探求」に分かれるとの話題で喧々囂々。「論理国語」って何? 「古典探求」って何? 「文学国語」ってどういうの? 「国語表現」ってどんなの? 導火線に火がつく。「わからないから不安なんですよ」と賢そうなお母さんが眉間に皺を寄せて言う。「現代の国語」と「言語文化」と二つの言葉が新たに加わる。

 
 ヒュー、ドカンと大きな花火が次々上がる。世の中わかんないことばかり。ドン ドン ドカン。

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