雪山入門|最初に準備すべき「冬山装備」を基本から解説! 今年こそ冬山登山を始めてみたい! でも、まずどんな装備を揃えればいいのかな? そもそもこの装備は何のために買わなきゃいけないんだろう? そんな方のために、まず『日帰りの冬山登山』に挑戦するために最低限揃えるべき装備や、その目的を解説します。これさえ読めば、納得して装備を揃えられること間違いなし! 安全のためにも一式揃えるとなると、それなりの金額はかかりますが、余計なお金をかける必要はありません。最後に冬山装備の一覧リストも紹介しますので活用してみてください。

冬山登山を始めたい! どんな装備から準備するべき?

紅葉シーズンが終われば、いよいよ冬は目前。これまでは紅葉登山が登り納めだったけれど、「今年は冬山にも挑戦したい!」と考えている人もいるのではないでしょうか。

冬山入門にあたり、まずハードルになるのが、冬向けの装備を揃えること。どんな装備を準備したらいいのかを確認することはもちろん、『なぜこの装備が必要なのか』を理解することも非常に大切です。

本記事の内容を最低限おさえ、安全に冬山登山を始めるための第一歩を踏み出しましょう!

まずは日帰りで! 標高差の小さい山を選ぼう

今回は、以下のような山での冬山デビューを想定して装備を紹介します。
積雪のある山で、山頂までの標高差が少なく日帰り可能なコース(黒斑山やロープウェイを利用できる北横岳など)

コースタイムは積雪状況により大きく異なりますので、少なくとも無雪期の1.5倍程度を見積もり、余裕を持った山行計画を立てる必要があります。

北アルプスや谷川岳など日本海に近い山は、内陸や太平洋側の山に比べて降雪量が多く風も強いため、厳しいコンディションの日が多くなります。これらのエリアは経験を積んでから挑戦するようにしましょう。

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そもそも夏山と冬山の違いって何だろう?

夏と冬では、例え同じ山であったとしても全くの別世界。標高が高い山ほど、積雪があったり季節による違いが大きくなります。共通して言えるのは、冬山の方があらゆるコンディションが厳しくなるということ。この厳しいコンディションに対応するために、装備を揃える必要があるのです。

まずは、どういった点に留意して装備を整えていくべきなのか、夏山と冬山の違いという観点から確認していきましょう。

【1】寒さ&強風

冬山は非常に寒いです。「当たり前だろ!」とツッコミがきそうですが、この寒さ対策というのは非常に切実です。特に冬山で意識したいのは、耳や手足の指といった“末端”の冷え対策。顔や胴体、脚などと異なり、これら末端は運動時も温まりにくいため、手袋や帽子などで冷えから意識的に守る必要があります。

また、夏山と違い、強い風にさらされるのも当たり前。山頂まで樹林帯が続く山であれば話は別ですが、森林限界に出るようなルートの場合は必ず準備が必要。風速1mにつき、体感温度が1度下がると言われていますよね。

実は、体温を維持するためには、「寒さ対策」以上に「強風対策」が重要なのです。

【2】雪&氷上の歩行

夏でも場所によっては雪渓を歩くようなことがありますが、フカフカの新雪の上を歩いたり、カチカチの氷上を歩くのは冬山ならではでしょう。

ピッケル・アイゼンワークなど、冬山特有の技術が求められる楽しさはありますが、そこには必ず転倒や滑落といった危険が伴います。対応できる装備を整え、その上でしっかりと使いこなす「技術」を身につけましょう。

【3】強い紫外線

冬の紫外線対策は夏以上に気を使いましょう。なぜなら、空からの太陽光だけでなく、雪面からの照り返しが加わるためです。

肌の日焼けは内臓への負担となり余計な疲労の蓄積につながりますし、晴れた日に裸眼で登山をするとあっと言う間に「雪盲(網膜の日焼け)」になります。雪盲になると登山どころか日常生活にも支障をきたしますので、絶対に防がなければなりません。

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【1】寒さ&強風|レイヤリングで柔軟に対応しよう!

レイヤリングは、登山における基本的であり重要な技術の一つ。その重要性は夏も同じですが、冬はよりシビアになります。夏以上に小まめな衣類調整を心がけましょう。

レイヤリングの基本は「寒くもなく、暑くもない」状態をキープすること。寒さが体温低下に繋がるのは言わずもがなですが、暑すぎて余計な発汗をすると、休憩時に風で急激に冷え、体温低下に繋がります

山に持参できるアイテム数は限られてきますので、その中からアイテム同士の組み合わせであらゆるコンディションに対応するのが理想です。なお、アイテムの素材は基本的に化繊かウール素材を選ぶこと。速乾性に劣る綿やレーヨンなどは厳禁です。

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レイヤリングの基本(ベースレイヤー・ミドルレイヤー・アウターレイヤー)

服装は「ベースレイヤー」「ミドルレイヤー」「アウターレイヤー」の3レイヤーの考え方が基本。トップス、ボトムス共に同様の考え方でOKです。
▼ベースレイヤー一般的には速乾性の薄手の長袖Tシャツなどを指します。ボトムスについても、ロングパンツであれば夏山のものを流用しても問題ありません。基本的に行動中は常に着たままなのが、この「ベースレイヤー」です。晴れた日、風がなければ、真冬であってもこれ一枚で行動できることもあります。

▼ミドルレイヤーフリースやダウンジャケットなど、保温性のあるウェアのことです。このレイヤーは、フリースの上にダウンジャケットを重ねるなど、必ずしも1枚だけで構成されるとは限りません。フリースジャケットとダウンジャケットの2枚を準備しておくと、多様な状況に対応できるのでおすすめです。

▼アウターレイヤー防水性・防風性のあるシェルジャケットのことです。フード付きのものを選びましょう。ボトムスもセットで揃えるのが無難。レインウェアでも代用可能ですが、本格的な冬山に臨むのであれば、冬山用のハードシェルジャケットの購入をおすすめします。強度的に優れ、運動量の多い状況でも蒸れにくく、快適性が向上するでしょう。

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頭部の防寒(ニット帽やバラクラバ)

まずはニット帽があれば問題ないでしょう。耳まで覆えるものがベター。ここにハードシェルジャケットのフードを組み合わせることで、多くの状況に対応できます。

顔の大部分を覆えるバラクラバも持っていると便利。積雪のそれほど多くない山であっても、急な吹雪に見舞われることもあります。1,000円程度のネックウォーマーでもいいので、いざという時のために携行しておくと安心です。

手先の防寒(グローブ)

手先の防寒についても、ウエアのレイヤリングと考え方は同じです。
▼ベースレイヤー基本的に冬山では素手は厳禁。ベースとなるグローブは常に着用して行動することを意識して、暖かく速乾性の高いものを選びましょう。

▼ミドルレイヤー気温が低い状況や、雪を触る時間が多くなるような状況では、防寒性が高い厚手の手袋を中間に着用することで、冷えから指先をガードします。

▼アウターレイヤー(オーバーグローブ)積雪がある環境では防水・防風性のシェル素材のグローブは必須。袖口の長いものが、雪の侵入を防ぐためにはベター。雪の濡れによる指先の凍傷の防止に役立ちます。

指先の防寒については、濡れは厳禁。日帰りでも予備の手袋を必ず準備しておきましょう。

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足の防寒(登山靴・靴下)

足については行動中の小まめな衣類調整ができません。このため、目的の山に応じたアイテム選定が重要です。

積雪が少なければ3シーズン用の登山靴でも問題ないこともありますが、可能な限り保温性のある冬山対応の登山靴を用意しましょう。

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また、靴下はしっかりと厚みのある、ウールの靴下がベスト。ウールであれば汗で多少濡れても暖かさは損なわれにくく、快適です。

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【2】雪&氷上の歩行|目的地のコンディションに応じて準備しよう!

本格的な冬山登山において、ピッケルやアイゼンを使わないことは考えられません。これらの装備なしには、固く締まった雪面や氷の上、急斜面を安全に歩行することが困難な場面も多く、使いこなすには訓練が必要です。

とはいえ、場所によってはこれらの装備が不要な場合もあります。目的の山のコンディションと相談して持参するか否かを決定しましょう。

ピッケル

冬山登山の装備の代名詞的存在のピッケル。歩行メインの使い方であれば、シャフト(柄)が真っすぐなタイプが使いやすいでしょう。

また、サイズ選びも重要ですので、お店の人に相談しましょう。歩行時のバランス保持や、強風下での耐風や雪上での様々な安全確保に役立ちますが、使いこなすのには練習が必要ですので、講習会等に参加するのがおすすめ。

ただし、技術的にそれほど難しくない山においては、トレッキングポールで代用できることもあります。目的の山のルート特性と相談しましょう。

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アイゼン

固く締まった雪上や氷の上の歩行には不可欠です。冬山で汎用性が高いのは10本爪以上のタイプ。登山靴との相性もありますので、初めての購入時はショップのスタッフさんに相談するのが無難です。ピッケルと同様、使いこなすには要練習。

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ゲイター

雪が靴の中に侵入するのを防ぐのが主な目的です。足指の凍傷のリスクを軽減するためにも必要な装備。特に、ラッセルを伴うような冬山登山においては必須装備です。

靴の裏に通すバンドが頑丈なものを選びましょう。また、ベルクロ留めのタイプの方が凍結などのトラブルに強く、おすすめ。

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【3】紫外線対策・その他|忘れずに携行しよう!

下記の装備も忘れずに。特に、紫外線対策を怠ると雪盲になり、眩しさと痛みで目が開けられなくなります。山中では行動不能に直結しますので、サングラスは超重要です。

サングラス・ゴーグル

サングラスは必ず用意しましょう。選ぶ際は、紫外線(UV)をカットする機能があることを確認。中には、レンズの色が暗くても紫外線を全くカットできないものがあるので要注意です。

また、紫外線は顔とレンズの間からも注いできますので、顔の形にフィットすることも重要。強風が想定される登山の際には、ゴーグルも非常に有用です。

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保温ボトル

冬山で飲む温かいドリンクは非常に美味しく、身に沁みるものです。それだけでなく、体を内側から温める目的もあるので、積極的に摂取したいものです。

そんな時に役立つのが、真空ステンレスボトル。蓋がコップになるタイプのものがおすすめです。冷ましながらゆっくりと飲むことができますし、雪を入れて冷却することも可能です。少々値は張りますが、モンベルやサーモスから販売されている“山専用”のボトルが軽くて保温性が非常に高く、おすすめです。

なお、もし保温性のないボトルを使う場合には、中身が凍らないようザックの中にしっかりと収めておきましょう。

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何かと初期投資が必要な冬山登山。装備は安全に直結するので、ケチるのはよくありません。一方で、初めはどんな装備が必要なのか、自分で判断するのは難しいものですが、余計なお金をかける必要はありません。「まず始めてみる!」をモットーに、必要最低限の装備を揃えるところから始めましょう。

夏と冬では全く異なる表情を見せる山。冬山登山を通じ、さらに山の世界にハマること間違いなし!

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