マツダ 新型MAZDA2 試乗│クラスを超える上質さに、ちょっと戸惑う私

マツダ MAZDA2 XD L Package
マツダ MAZDA2 15S PROACTIVE S Package

クラスを超え上質感が増したMAZDA2

もしコンパクトカーを選ぼうと思った時、身の丈にあったクルマがいいのか、それともクラスを超えるような上質なものがいいのか……。MAZDA2に乗ってからずっとそんなことを考えていた。マツダのコンパクトカーであるデミオが名前をMAZDA2に改めてマイナーチェンジしたが、デミオだった頃は前者で、MAZDA2になった今は、はっきりと後者になったように思う。

これまで少しやんちゃな子犬のような顔をしていたのが、すっきりとシンプルなデザインになって、全体的に角を立てずに丸くなった印象だ。セラミックメタリックという陶器のような白ともグレーともつかないシックなボディカラーが今回から新たに追加されたのも頷ける。マツダのイメージカラーである赤だけではなく、こういったホワイト系の上質なカラーリングが似合うようになった。

すべての質感が高まったMAZDA2では、ガソリンエンジンだと少し物足りない?

マツダ MAZDA2 XD L Package
マツダ MAZDA2 XD L Package

実際に新型MAZDA2に乗り込んでみても同じ印象を受ける。包み込まれるような空間に1クラス上のクルマのような質感。新素材のシートを採用していることと、構造上ボディの間に隙間があった部分を埋めたりすることで静粛性をより高めたことが大きいような気がする。サスペンションの改良によって、乗り心地もデミオより突き上げが少なくなっているので、それも上質さに輪をかけているようだ。心地の良い椅子に体を預けて、静かな空間に身を置いていると、自分だけの部屋にいるような気持ちになる。

マツダ MAZDA2 XD L Package

デミオは、良くも悪くも「コンパクトカーなり」というか、全ての質感がMAZDA2よりも軽くて、こちらはこちらで気負わずに毎日気楽にスイスイ乗れる良さがあった。エンジンもディーゼルだとちょっと重たくて、パワーもやりすぎに感じるくらいだったので、ベストチョイスは軽やかに走れるガソリンエンジンだと思っていた。

ところがMAZDA2になって、すべての質感が高まったクルマを運転していると、1.5Lのガソリンエンジンだと少し物足りないと感じるほど。パワーは問題ないのだが、必要なトルクを出すのに思ったより回転数を上げなければいけないので、エンジンの音が高まるにつれて、アクセルを踏み込むのに少し躊躇する。もちろん1.5Lのディーゼルエンジンもディーゼルらしい音はするのだが、頑張ってエンジンを回さなくても、どこからでも余裕を持って加速できるから、MAZDA2全体の質感に合っているし、より安心してクルマに体を預けて運転できるような気がした。

MAZDA2によって、クルマ本来の楽しさが伝わってほしい

マツダ MAZDA2 XD L Package

「でも、280万円かぁ……」。

乗っていたモデルは最上級グレードのXD L Package(4WD)+諸々オプション付きだったので、もはや値段もコンパクトカーを超えてしまっている。ガソリンモデルは150万円代からあるが、新しいMAZDA2くらいにきちっとした質感があるクルマだと、やっぱりハイグレードを選びたくなってしまう。もちろんオーナーが手にして心から満足できるクルマはとても大切だが、コンパクトカーであればもう少し気軽にクルマを買えそうな値段のモデルがもっと魅力的だといいのに、とも思う。

冒頭に自問自答していたことをもう一度思い返す。やはりコンパクトカーは身の丈に合った選択ができるから良いのだろうな、と。

MAZDA2はとても良いクルマになっているからこそ、今のマツダの上質すぎるプロモーションだけの印象だけではなく、毎日の運転を楽しくしたり、もっと遠くへ行ってみたいと思ったり……そんな風に良いクルマを手に入れることで、日常を優しく変えてくれる存在だということがユーザーにも伝わればいいなと感じた。

[筆者:伊藤 梓/撮影:小林 岳夫]

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