【台風19号】伝統「大名行列」で元気PR 箱根町

昨年行われた大名行列の様子=箱根町湯本

 箱根の秋の風物詩「箱根大名行列」が11月3日、神奈川県箱根町の湯本地区で開催される。町内に深い爪痕を残した台風19号の影響で一時は実施が懸念されたが、観光の目玉となる伝統行事を絶やさないよう求める地元の熱い声を受け、予定通り開催することを決めた。「箱根の元気な姿をアピールしたい」。主催する箱根湯本観光協会は成功に力を込めている。

 「予定通りでいいのか」。記録的大雨が各地に甚大な被害をもたらした台風19号の通過後、実行委員会の会合で今年の開催をためらう声が上がった。

 町内では、土砂崩れの影響で橋脚が流されるなどした箱根登山鉄道が箱根湯本-強羅間で運行を見合わせており、箱根の玄関口である湯本から強羅方面へは車でしか行けない状況。国道も一部区間で通行止めが続き、大名行列で交通が規制される箱根湯本駅周辺は渋滞が予想される。温泉の供給が止まっている旅館やホテルもあり、関係者の間では「他のエリアや観光客に迷惑が掛かるのではないか」との懸念があったという。

 しかし、地元では開催を求める声が根強く、町内の別の観光協会などからも「今大名行列をやれば、箱根は元気とPRできる」といった声が寄せられた。これを受け、箱根湯本観光協会は16日の実行委で予定通りの開催を決定。台風被害を受け、観光物産館前の本部テントで強羅や仙石原など各地区の観光パンフレットを配布するほか、箱根登山鉄道の沿線に咲くアジサイの復活を応援する募金箱を設置する。

 箱根大名行列は1935年に始まった伝統行事。小田原藩11万3千石の格式に倣い、約170人が江戸時代の参勤交代をしのばせながら盛大な時代絵巻を繰り広げる。今回は小田原出身の俳優柳沢慎吾さんが若殿役として参加し、イベントを盛り上げる。湯本は被害が少なく、例年通り午前10時に湯本小学校を出発し旧街道など約6キロを練り歩くコースで実施する。

 同協会の西島庸吉会長(53)は「箱根全体の思いを胸に、柳沢さんの力を借りて明るい行列にしたい」。保存会の田中康久会長(64)は「戦時中以外は途絶えず続けてきた祭り。行列を見た後は、箱根を周遊してほしい」と呼び掛ける。問い合わせは、同協会電話0460(85)7751。

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