齊藤工、北村一輝、ジョコ・アンワルが意気投合。「3人で映画が作れたらいいね」

「ゲーム・オブ・スローンズ」(2011~19年)などを放送するアメリカのテレビ局・HBOがアジアで展開するHBOアジアが制作したオリジナルドラマシリーズ「フォークロア」(11月10日、スターチャンネルで放送)。アジア6カ国(インドネシア、日本、マレーシア、シンガポール、タイ、韓国)の監督が、それぞれの国の伝承(=フォークロア)をテーマに描いたホラーアンソロジーの中から、日本の齊藤工監督作「TATAMI」とインドネシアのジョコ・アンワル監督作「母の愛」が10月30日、第32回東京国際映画祭・CROSSCUT ASIA部門で上映され、Q&Aセッションに齊藤、「TATAMI」主演の北村一輝、アンワルが登壇した。

齊藤は「僕がこの業界に入ったのは約20年前。北村さんの撮影現場を見学に行ったことが第一歩です。その北村さんを主演に迎えて映画を撮れたこと、いつも刺激を受けている鬼才、アンワル監督と並んで作品を発表できたことを誇らしく思っています」とあいさつ。それを受け、北村も「齊藤監督がおっしゃったように、20年前、まだ俳優になる前から彼はいつか映画を撮りたいと言っていたので、『その時は俺も呼んでよ』なんて話していました。それが実現して特別な思いがあります」と古くからの2人のつながりを明かした。

アンワルは「僕の監督デビュー作『ジョニの約束』(05年)は、05年の第18回東京国際映画祭で上映されました。ここでまた新作が、齊藤監督の『TATAMI』と一緒に上映されて、とても喜んでいます。さっきは楽屋で、齊藤さん、北村さんと『3人で映画が作れたらいいね』と言って盛り上がりました」とすっかり意気投合した様子。

「TATAMI」は父の葬儀で帰京した記者の男性が知ることになる家族の秘密を、畳の染みに絡めて描き、「母の愛」は母親と少年に降りかかる怪奇現象を描いている。観客からそれぞれの物語の発想について質問され、ホラー作品初挑戦となった齊藤は「日本の伝承について考えた時に、すぐに畳が思い浮かびました。劇中にわら人形が出てきますが、昔の畳は表面が井草で中にわらが詰まっていたことから、わら人形に人の思いが宿っているように、畳にも人の念がこもっていると考えました」と回答。

アンワルは「インドネシアの女性の幽霊の伝承を基にしました。その幽霊はとても大きな胸をしていて、親から愛されない子どもをその胸に隠してさらっていくと言われています。小さい頃、遅くまで外で遊んでいるとその幽霊にさらわれると母から言われて、とても怖かったことを覚えています。今回の作品に出てくる厳しい母親は僕の母が、少年は僕自身がモデルです」と答えていた。

俳優でもある齊藤の監督ぶりを聞かれた北村は「齊藤監督が準備の時間をたっぷりとってくれたことがうれしかったですね。僕たち俳優にとっては、脚本を読み込んだり、(演技を)どう見せるかを考えたりする準備が一番大事なんです。そこを分かってくれている。撮影は監督の性格のように穏やかに爽やかに進んでいきました。撮っている映画とは全然違うんですけどね(笑)」と撮影当時を振り返った。

最後に齊藤は「TATAMI」のロケ地である(静岡県)御殿場が先日の台風で大きな被害を受けたことから、「御殿場がなければこの作品は撮影できなかった。他にも千葉や(栃木県)足利など、日本の撮影クルーにとってなくてはならない土地が被災してしまいました。1日も早い復興を祈っています」という言葉で、Q&Aを締めくくった。また、その後のフォトセッションには客席で上映を見ていた「TATAMI」に出演した俳優の黒田大輔が齊藤に招かれて飛び入り参加。和やかな雰囲気のうちに撮影も終了した。

© 株式会社東京ニュース通信社