HBOのドラマアンソロジー「フードロア」。“アジアの食”を描いた2人の監督が来日

「ゲーム・オブ・スローンズ」(2011~19年)、「TURE DETECTIVE」(14年~)などのドラマでおなじみのアメリカの放送局・HBOがアジアで展開するHBOアジア。アジア6カ国の監督が集結したホラーアンソロジー「フォークロア」(18年)に続き、同局はアジア各国の「食」をテーマにしたドラマアンソロジー「フードロア」(スターチャンネルで20年に放送予定)を制作。8話構成の同作から、フィリピンのエリック・マッティ監督作「Island of Dreams」とベトナムのファン・ダン・ジー監督作「彼は魚をさばき、彼女は花を食べる」が10月30日、第32回東京国際映画祭・ワールドフォーカス部門で上映され、Q&Aセッションに両監督が登壇した。

映画上映後にセッションがスタートしたのは午後11時前という遅い時間だったが、客席には多くの観客が残り、制作秘話などに耳を傾けていた。ファン(写真・左)は「私はまだ夕飯を食べていないので、この映画を見ていたらおなかがすいてしまいました。皆さんはおなかがすいていませんか? どうぞ、この後、おいしいものを食べてくださいね」とあいさつし、会場を和ませた。

いつか食をテーマに映画を撮りたいと思っていたというマッティ(写真・右)は、都会で家政婦として働く女性を主役にした「Island of Dreams」を監督。「フィリピンはスペインに統治されていたので、食習慣はあまりアジア的ではありません。フィリピンの食にとって特徴的なのはフィエスタ(各地で開かれるお祭り。スペインの影響が強い)なので、今回、題材にしました。日本でもたくさんのフィリピン人女性が家政婦やベビーシッターとして働いているので、日本、そして外国の皆さんも本作に共感してくれるのではないでしょうか。それと同時に、貧しいからといってギブアップしない、家族に尽くすだけではなく、自分自身の人生を生きようとする強いフィリピン女性を描きました」と同作に込めた思いを語った。

一方、男女の関係を通して食と愛を描いた「彼は魚をさばき、彼女は花を食べる」を手掛けたファンは、「私は“食べる”ことしかできないので、この企画のオファーを受けた時、正直に言ってビックリしました(笑)。なので、料理や食べものについて詳しく描くのではなく、ベトナムの食べものを紹介できるような作品にしたいと思いました」と振り返った。

また、同作に日本料理や日本食レストランが登場することについては「ベトナムでは日本料理の人気が高い。元々、油っこい料理を食べないベトナム人にとって日本料理はとても食べやすいのです。レストランのシーンは実際の日本食レストランで撮影したし、料理も実際にお店で出しているものです」と説明。さらに今後、川端康成の小説「水月」を基に日本人俳優を起用した映画を撮りたいという展望を明かしつつ、「食文化も含め、日本には不思議なことが多い。僕からするとちょっとやりすぎではと感じるものもあります。そんな気持ちを映画で表現したいですね」と、日本に対する率直な印象を語ってくれた。なお、同アンソロジーには日本から齊藤工監督が参加している。

取材・文/青木純子

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