「不妊治療」による家計の負担を減らすために、知っておきたいお金のこと

不妊治療は高額になることがあり、家計を圧迫してしまうことが珍しくありません。しかし、公的制度を使いこなし、家計を工夫することで、経済的な負担を軽くすることができます。

知っているのと知らないのでは大違い!不妊治療でかかるお金や役立つ制度などについてご紹介します。


不妊治療は「高い」って本当?

不妊治療はお金がかかるイメージがあるかもしれませんが、必ずしも治療費が高くなるとは限りません。病院に行くと、まずは健康保険が適用される検査や治療を中心に行うのが一般的です。そのため、必要な費用は1件あたり数千円~1万円程度で、それほど高額な治療費にはなりません。

ただ、不妊治療のステップをあげて人工授精や体外受精などの治療法を始めると、健康保険が適用されないために高額になってきます。人工授精なら1回数万円ほどですが、体外受精になると1回で50万円以上かかることもあります。しかも、成功しなければ何度も繰り返すことになり、総額で数百万円以上かける人もいます。

高額になる治療法を長く続けるほど家計の負担は大きくなります。不妊治療では精神的な負担や身体的な負担も少なくないので、せめて家計の負担だけでも減らしたいものです。そのため、役立つ制度はフル活用し、家計の節約も効果的なものから取り組むとよいでしょう。

不妊治療の「助成金」で負担を減らそう

体外受精や顕微授精などの「特定不妊治療」については、国の助成制度があり、初回利用時には最高30万円の助成金を受け取ることができます。平成31年度からは助成の対象が広がり、男性不妊治療も助成対象となりました。

助成金をもらうためには期限内に申請する必要があるので、治療を始める前に制度の内容をよく確認しましょう。

資料:厚生労働省ホームページ をもとに執筆者作成

また、不妊治療について独自の助成制度を設けている都道府県や市区町村は多いです。対象者の条件が緩くなっていたり、助成金が上乗せされて支給されたりします。まずはお住まいの自治体のホームページなどで確認してみてください。

「医療費控除」で負担を減らそう

不妊治療で支払った医療費が高額になったときは、医療費控除を使うことで家計の負担を減らすことができます。医療費控除とは、1年間で支払った医療費に応じて所得税や住民税が減額される制度です。医療費控除の対象となる医療費は幅広く、病院で支払った医療費のほか、病院への交通費や市販薬代なども対象になります。

医療費控除の対象となる費用の例

・病院での検査代や治療費(歯科も対象)
・薬代(市販薬も対象)

・病院までの交通費

・治療のためのはり治療やマッサージ代

医療費控除を利用するためには確定申告が必要です。申告時には医療費を支払った証拠が必要となるので、病院や薬局で受け取ったレシートは保管しておいてください。また、病院までの交通手段や料金をメモしておくと、申告書類をスムーズに作ることができるでしょう。

会社の制度を活用して収入をキープしよう

不妊治療中は頻繁に通院が必要になり、今まで通りに仕事を続けることが難しくなる人もいます。それでも、不妊治療と仕事はできるだけ両立させて収入を減らさないようにすることが大切です。

病院を選ぶときは、勤務時間の前や後、昼休みなどに行ける場所にすると通院しやすいです。また、勤務先に「フレックスタイム制度」「半日単位・時間単位の年次有給休暇制度」「テレワーク制度」などの制度があれば、積極的に活用しましょう。

治療に専念したいときは、退職ではなくまずは休職制度を利用できないか検討してみてください。なかには不妊治療のための費用補助や休暇制度を整えている企業もあるので、会社の制度をよく確認してみましょう。

効果的な節約方法から取り組もう

不妊治療による出費が増えると、日々の生活費を節約しがちです。しかし、毎日節約続きではストレスが溜まってしまいます。長い目でみて高額になる支出に目を向けて、効果的に家計を改善しましょう。

(1)総額が高いものから見直す
実は、買い物するたびに節約を意識するよりも、普段ほぼ無意識に支払っているお金を見直すほうが節約効果は高くなりやすいです。なぜなら、毎月の支出金額は高くなくても、総額では高いことが珍しくないからです。

思いきって住居費や自動車関係費を削減できれば効果は特に大きくなります。生命保険料や携帯代、習い事、そのほか毎月定額で支払っているサービス料などを見直すだけでも、家計の負担はかなり軽くすることができるでしょう。

(2)人生全体の収支を確認する
不妊治療は長い人生で考えれば一時的な支出です。そのため毎月の収支よりも、人生全体で赤字でないかどうかを確認することが重要です。

できれば一度、将来の家計収支を表にまとめた「キャッシュフロー表」を作成してみましょう。これから必要なマイホームや老後費用などを考慮して資金計画を立てることができるので、不妊治療にかけても大丈夫な金額の目安が分かり、安心して治療に取り組みやすくなるでしょう。

不妊治療は高額になることもありますが、希望する人生を実現するために必要な大切な支出です。役立つ制度はフル活用し、家計を上手にやりくりしましょう。

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