「主戦場」の上映決定 「しんゆり映画祭」最終日に

公開討論会で「表現の自由を守るため一緒に闘いましょう」と呼び掛けるデザキ監督=10月30日、川崎市麻生区の市アートセンター

 川崎市麻生区で開催中の「KAWASAKIしんゆり映画祭」で慰安婦問題を主題にしたドキュメンタリー映画「主戦場」の上映がいったん予定されながら中止になっていた問題で、主催のNPO法人「KAWASAKIアーツ」は2日、同作を最終日の4日に上映すると発表した。共催者の川崎市の懸念表明が発端となったことから「表現の自由を守れ」「検閲は許されない」との批判が続出。映画関係者や市民から上映を求める声の高まりを受け、再検討を進めていた。

 映画祭スタッフで投票を行い、最終日の上映が賛成多数となった。主戦場のミキ・デザキ監督と配給会社「東風」は「声を上げ行動してくれた全ての皆さん、映画関係者やジャーナリスト、励ましてくれた皆さん、映画祭スタッフにお礼を言いたい。一人でも多くの人が映画祭のスクリーンで見てくれることを心から願う」との声明を出した。

 抗議のために出品を取りやめた映画製作会社「若松プロダクション」も支持を表明、白石和彌監督の作品を4日に復活上映する。

 「主戦場」を巡っては、慰安婦問題を否定的に捉える一部出演者が上映差し止めを求める訴訟を起こし、川崎市が「訴訟になっている作品を上映するのはどうか」と主催者に懸念を伝達。6月に決まった上映が9月に入り、脅迫や嫌がらせなど安全面の不安を理由に中止となっていた。

 上映中止は10月下旬に報道で明らかになり、是枝裕和監督は舞台あいさつで「行政の懸念を真に受けた作品の取り下げは映画祭の死を意味する」と批判。同30日の公開討論会では、慰安婦問題や反差別運動に取り組む市民らから警備の申し出が相次ぎ、映画祭の中山周治代表は「安全の問題がクリアできれば前向きに検討したい」との考えを示していた。

 上映は市アートセンターを会場に午後7時55分から。無料。主催者が警備態勢を整え、有志の市民や弁護士も会場周辺の見守りに集まる予定。主催者はボランティアを追加募集している。

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