選手、サポーターに愛され V長崎・髙田社長退任へ

J1昇格を決めて、サポーター席で喜ぶ高田社長=2017年11月11日、トランスコスモススタジアム長崎

 V長崎の「顔」だった髙田明社長の勇退が決まった。決断力、実行力、そして求心力を備えたリーダーは、抜群の知名度を生かしながら、全国各地を飛び回ってクラブのPRに力を注いできた。

 2017年4月に就任。V長崎のメインスポンサーを担う通販会社の経営を退いて2年が過ぎていたが、クラブが直面していた経営危機に「長崎の希望をなくしてはいけない」と立ち上がった。早急な資金投入や前向きなメッセージを発信してピッチ内外の不安を除去。J1昇格の夢を長崎に届けた。

 人と人とのつながりを何より大切にしていた。ホーム戦はもちろん、アウェー会場にも可能な限り訪れてサポーターと交流。率先して各地を飛び回り、全国のサッカーファンの心をつかんだ。時に選手やスタッフを自宅のパーティーに招き、J1昇格を決めた年末はハワイ旅行をプレゼントした。前主将の高杉はチームの思いを代弁する。「とにかくあの方自身のパワーがすごい。一気に明るくなった」

 3日の横浜FC戦は髙田社長の71回目の誕生日だった。長崎から多くの人が駆けつけた観客席には「夢を共有できたことに感謝」の横断幕があった。雲仙市の会社員、野口耕平さん(28)は「クラブをいい方向に導いてくれて、ありがとうの言葉しかない」。選手にも、サポーターにも、気さくな人柄で愛された。

 惜しまれる声が多い一方、本人は早期退任を望んでいた。「ある程度の方向性ができたら、次の人に任せたい」。早い段階からそう繰り返して、有言実行した。潔い引き際だった。

 手倉森監督はサッカーを通じたイベントで髙田社長と出会った縁から、V長崎の指揮を執ることを決めた。「社長の意を酌んで残りの一戦一戦、力を注がなければいけない。花道を飾りたい」

 就任から2年半、言葉にし続けてきた思いがある。「サッカーには夢がある」。その夢を、今度はクラブ、サポーターがしっかりと受け継ぎ、大きく成長させていかなければならない。

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