読書の秋に

 灯火親しむべきこの季節、語義の説明にどこか味のある新明解国語辞典(三省堂)で「読書」を引いてみる。第7版には〈精神を未知の世界に遊ばせたり、人生観を確固不動のものたらしめたりするために、本を読むこと〉とある▲さらに説明は続く。〈寝ころがって漫画本を見たり電車の中で週刊誌を読んだりすることは、本来の読書には含まれない〉。なかなか厳しい▲この説明に沿うならば、寝転がり、スマートフォンでネット情報に触れるという、今どきありがちな行いは「読書」に含まれない。人々の生活から少しずつ読書が遠のくように思える中、きのうの「文化の日」を挟んで9日まで「読書週間」が続く▲文化庁の昨年度の調査では、読書量が「減っている」という人は7割近くに及んだ。理由を聞けば、40歳未満の若い層ほど、スマホやゲーム機といった情報機器を使うのに時間を費やすから、という答えが多い▲一方で全体の4分の1が、電子書籍を利用するとも答えた。20代では実に半数を超えている▲匂いといい、手触りといい、紙の本の魅力がうせることはないにせよ、電子書籍の役割も見過ごせない時代になった。「寝転がって電子書籍を見る」というのも立派な「読書」に思えるが、新明解国語辞典、通称「新解さん」のご所見はどうだろう。(徹)

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