W杯閉幕

 サッカーも野球も柔道も、トーナメント形式で争う競技の「銀メダル」は負けて大会が終わる。直後の表彰式は、勝者の歓喜と敗者の失意をしばしば鮮明なコントラストで描き出す▲敗者にはつらい時間だ。見ている私たちもそれを分かっているから、表彰台の2番目に高い所に立つ選手にはいつも、優勝者に負けない拍手が送られる。だが▲敗戦の笛はさっき鳴ったばかり、負けを受け入れるには時間が足りなかったか。2日閉幕したラグビーワールドカップ(W杯)日本大会、決勝で敗れたイングランドの選手たちが銀メダルを拒否するそぶりを見せた▲あと一歩届かなかった頂点。選手たちはゲームの結果ばかりでなく、持ち味を封じられてしまった自分たちにも腹を立てていたのだろう。「銀などいらない」。それでも決して褒められた振る舞いではなかった▲とはいえ「画竜点睛を欠いた…」などと悔やむには当たるまい。国際統括団体は「最も偉大なW杯の一つとして記憶に残る」と大会に最大級の賛辞を送った▲台風被害の復旧作業に飛び込んだ外国選手の姿、感謝を形で表す「おじぎ」の流行、“多様性”を最大の武器に勇敢に戦った日本代表…。こんな短い行数ではとても書き尽くせない感動と遺産を残した熱い熱い44日間。いつまでも忘れまい。(智)

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