孤立を防ぐ社会に 愛知教育大大学院の川北准教授 「8050問題」長崎で講演

中高年の引きこもりについて意見交換する(右から)川北氏、坂本氏、中根氏=長崎市千歳町、チトセピアホール

 引きこもりの子が50代、親が80代と高年齢化する「8050問題」を研究している愛知教育大大学院教育実践研究科の川北稔准教授が4日、長崎市で講演し、当事者家族に寄り添うサポートを通して「孤立を防ぐ社会にしたい」と語った。
 国が3月に公表した調査では、40~64歳の中高年で引きこもりの人は推計約61万人と、若年層(15~39歳)の約54万人を上回る。不登校の延長で引きこもりになるケースに加え、退職がきっかけになることも多い。
 川北氏は、親は世間への負い目などから周囲に相談しづらいとする一方、当事者の中には「コンビニでの買い物や趣味のためには外出できる人もいる」と指摘。支援者には、引きこもりの解消にこだわらず、まずは外部との接点を築く視点が重要だとし、家族については外部に話しやすいことから相談してほしいと呼び掛けた。
 講演は、自殺予防を目的とする「長崎いのちの電話」の開局25周年記念事業で、約200人が参加した。
 運営団体の中根允文(よしぶみ)理事長と長崎新聞社報道部の坂本文生次長を交えた意見交換もあった。坂本氏は、引きこもりに関連する事件報道が全国で相次ぐ中、当事者への差別や偏見をなくすには「当事者を『困った人』と捉えるか、『生きづらさを感じている人』と捉えるかが分かれ目だ」と強調した。

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