老舗が生んだ意外性あふれる一品 漬物のイメージを変える新しい風

 ギャップ萌(も)え―。

 「こんなのあるんだ!大賞」北信越ブロック予選で1位になった「木の花屋」(長野県千曲市)の「つけものケークサレ」を一言で表現するなら、その名前と見かけ、味が意外性にあふれていることからこうなるだろう。

「つけものケークサレ」

 外見はまるでパウンドケーキ。しっとりした生地の中に赤や緑の食材はあるものの、そこに「つけもの」の存在感はみじんも感じない。見たままを信じ、ケーキのつもりで食べてみる。あら、びっくり。甘くないのだ。そして、しばらくすると塩気とうまみ、食感とともに漬物がはっきりと姿を見せる。

 正直、戸惑う。でも、おいしい。「もう一つ」。気づくと手が伸びていた。

 ところで、「ケークサレ」ってどういう意味? 「木の花屋」の専務、宮城恵美子さんによると発祥はフランスで、ケークは「お菓子」、サレは「塩」を意味するという。甘くなくて、当然だ。肉や野菜、チーズなどを具材にすることから「おかずケーキ」とも呼ばれている。

 「つけものケークサレ」は「木の花屋」と長野県産コシヒカリを使って米粉のパンやケーキを製造している「農林木島平」が共同で開発した。だから、原料は小麦粉ではなく、米粉。これに漬物を合わせているのだから、絶妙な味わいになるのも納得できる。

 漬物を提供しているのが「木の花屋」だ。同店は1909(明治42)年創業の「宮城商店」が運営している。現在は主に漬物を扱っている110年の歴史を誇る老舗が、しゃれた商品を生み出した背景には宮城さんの次のような思いがある。

 「漬物の新しい風を吹かしたい」

 それは見事に結実した。「オリーブやチーズをのせて、オーブンで焼いてもいけそう」「ワインをはじめとするお酒とも合いそうだな」…。食べ進むにつれて、アイデアが次々と浮かんでくる。いずれも漬物だけではまず、思いつかないものだ。いにしえから日本人の食卓にあるが、決まり切った食べ方しかしてこなかった漬物のイメージは一変し、その可能性が今、確実に広がった。

 成人男性なら一口で食べきれてしまえそうな「つけものケークサレ」。そこにさまざまなギャップが意図して練り込まれている。何とも粋な食べ物だ。

  各地に大きな被害をもたらした10月の台風19号では、同県を流れる千曲川が決壊し工場が浸水するなどしたものの、現在は立ち直りつつあるという。

 (共同通信 榎並秀嗣)

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