会社員が今から年末までにできる「節税対策」、基本から難易度高めの方法まで

平成31年で始まり、令和元年に引き継がれた本年も、そろそろ終わりがみえてきました。年末調整や確定申告が近づいてきましたね。あと2カ月ほどあれば、今からの行動が節税につながるかもしれません。今回は、年末まで間に合いそうな対策を探ってみましょう。


(1) 過去の年分の還付申告をするならいつまでに?

会社員は、年末調整で税金の計算と精算は会社が行うので、通常は確定申告しません。しかし、その会社員が過去の年分について、たとえば医療費控除や、住宅ローン控除、寄付をしていた、災害にあって損失が生じた、中途退職してそのままにしていたなどで申告をしていなかった場合でも、5年間はさかのぼって確定申告をすることにより、還付を受けられます。

そして、その所得税(国税)の還付申告の内容は、住民税(市県民税)にも影響し還付の対象となります。

ただし、住民税においては、住宅ローン控除は要注意です。

本来の適用を受けられる年分の住民税が確定する5月ごろまでに申告しておかなければ、適用は受けられません。つまり、住宅ローン控除は、所得税は5年間さかのぼれますが、住民税は期間制限があるということです。

なお、平成26年分の還付申告は令和元年12月31日が期限です。

(2) 国民年金保険料を支払う

多くのサラリーマンは、会社で健康保険や厚生年金に入っています。

過去の国民年金保険料の未払い分を払ったり、同居している子供の国民年金保険料を来年3月分まで今年中に前払いしたりすると、今年の所得から全額差し引くことができ、所得税と住民税の節税につながります。

もし、年末までにあと5万円の国民年金保険料を支払うと、所得税率が10%の人であれば、所得税と住民税合わせて、約1万円の税金が軽減できます。

(3) 地震保険・生命保険等に加入する

自然災害が多い日本では、何かあったときに最低限の生活を維持できるよう自分の身を守ることは、とても大切です。地震保険・生命保険等の還元で最大5万円が所得から差し引くことができます。もし、年末までに加入して5万円の地震保険料を支払うと、所得税率が10%の人であれば、所得税と住民税合わせて、約1万円の税金が軽減できます。

また、生命保険、個人年金、介護医療保険などはいずれもそれぞれ最大4万円ずつ所得から差し引くことができます。これらは年末までに支払った金額により、所得から差し引かれる金額は異なりますが、仮に生命保険料8万円以上、個人年金保険料8万円以上、介護医療保険料8万円以上支払うとすれば、最大12万円を所得から差し引くことができます。

この結果、所得税率が10%の人であれば、所得税と住民税合わせて、約2万4000円の税金が軽減できます。

(4) 医療費控除・セルフメディケーション税制

医療費控除も受けられるかどうかを確認しておきましょう。原則として1年間の医療費、医薬品費、通院費等の合計が一家で10万円を超える場合に、医療費控除を受けられます。なお、所得が200万円以下の方は医療費等が「所得金額×5%」を超えると適用があります。

12月までに支払った金額から、保険金で補填される金額を差し引いた金額で判定します。

例えば、現時点で12月までに10万円を超えそうな場合、今年のうちに治してしまえるものは治しておくのもありでしょう。いずれしなければならない歯の治療を今年中にしてしまい、ついでに同居している親の入れ歯を、今年のうちに作るなどもありかもしれません。

医療費控除の兄弟分である「セルフメディケーション税制」もあります。これは、特定一般用医薬品等(スイッチOTC医薬品)の支払額が、年間1万2,000円を超えるとき、超える部分の金額について、その年分の所得から差し引くことができる制度です。

このスイッチOTC医薬品代は、先ほどの医療費控除の対象にもなります。ただし、医療費控除に含めて申告するか、セルフメディケーション税制で申告するかは選択ですので、12月までは、一家で支払った医療費や医薬品の領収書は、1カ所にまとめておきましょう。

協会けんぽや国民健康保険などから送られてくる「医療費のお知らせ」で、医療費控除は受けられますが、自費診療や市販薬、年末の数か月分の病院代、通院費等は、「医療費のお知らせ」にのっていませんので、やはり、集計するためにも領収書やメモ書きは必要です。

なお、セルフメディケーション税制は、健康診断や予防接種を受けた人が申告できる制度です。まだ、会社で健康診断を受けておらず、予防接種もしていない方は、12月までに受けておけば適用できます。

ただし、この健康診断費用や予防接種の費用は、セルフメディケーション税制の医薬品代に含めませんので、ご注意ください。

(5) ふるさと納税

今年もかなり話題となった「ふるさと納税」。税金に影響するふるさと納税の集計期間は、1月1日から12月31日です。12月31日までクレジットカード決済できる自治体もありますが、12月上旬ぐらいで締めきるところもあります。また、お目当ての特産品が品切れで終了してしまう残念な場合もありますので、寄付したい自治体を早めにチェックしておきましょう。

(6) 相続した自宅(空き家のまま)を売る場合の特例【難易度 高】

通常、土地・建物を売った場合、値上がり益に20%の税金がかかりますが、一人暮らしの親の自宅を相続等で引き継いだ後、ずっと空き家のままであった場合、自宅やその敷地を売却したときに税金の軽減制度が使えるケースがあります。

その自宅を取り壊して更地にして売却したときや、建物を耐震改修して売却するなどの要件を満たすと、売却益から3,000万円を差し引くことができ、大幅に税の軽減を狙える特例です。

「相続があったのがいつか」により、「いつまでに売れば適用を受けられるか」が異なります。

・平成28年1月1日までの相続「もう適用はありません」

・平成28年1月2日~平成29年1月1日までの相続
「令和1年12月31日までに売る」

・平成29年1月2日~平成30年1月1日までの相続
「令和2年12月31日までに売る」

・平成30年1月2日~平成31年1月1日までの相続
「令和3年12月31日までに売る」

・平成31年1月2日~令和2年1月1日までの相続
「令和4年12月31日までに売る」

・令和2年1月2日~令和3年1月1日までの相続
「令和5年12月31日までに売る」

この特例は次のような細かい要件を満たさなければなりませんので、平成28年1月2日~平成29年1月1日までに相続があった人が、今年の年末までに売却までするのは難しいかもしれませんが、該当する方は早急に税理士か市役所に相談してみてください。

1.相続開始前に親が一人住まいであったこと
(平成31年4月以後の売却なら、親が老人ホーム入居中に亡くなった場合も適用できます)
2.相続から3年を経過する年の12月末までに売却すること
3.昭和56年5月31日までに建てられた家であること
4.家屋を取り壊して更地にするか、耐震基準を満たすリフォーム等をして売ること
5.相続時から売却時まで、事業用や居住用や貸付用に使っていなかったこと
6.売却価額が合計で1億円以下であること
7.市町村長に売却時まで空き家であったことの確認証明を出し、もらうこと

(7) 扶養親族を増やす【難易度 高】

扶養控除に関連することは12月31日の現況で判断しますが、今から年末までに扶養親族を増やすのはなかなか……。15歳未満は扶養控除の対象にはなりせんので、無理して12月中に出産しても、税金の負担は減りません。

できるとすれば、12月末までに所得が少ない人と結婚する、16歳以上の所得の少ない人と養子縁組する、所得の少ない両親と同居するなどなど。

所得の少ない人とは、所得金額で判断します。
たとえば、給与収入なら103万円以下の人、65歳以上の扶養親族の年金収入でいえば158万円以下の人です。

なお、配偶者控除・配偶者特別控除の所得の判定は、扶養親族の所得の判定とは異なります。給与収入なら最大約201万円までは、配偶者控除か配偶者特別控除の適用があります。

(8) 住宅取得と増改築【難易度 高】

また、今から新たに住宅ローン控除を受けたいと思っていても、あと2カ月ほどですのでなかなか難しいでしょうね。

借入金で住宅を取得して、かつ、年末までに住み始めなければなりませんから。

ただし、増改築して住み始めることなら間に合うかもしれません。ローンを組まなくても、税額控除をうけられる特例もあるからです。

なお、ローン無しの増改築の場合は、省エネ、耐震、バリアフリー、多世帯同居などのそれぞれの基準を満たさなければなりませんので、工事を依頼する業者さんにご相談ください。

節税のためにお金を支出するのは本末転倒です。しかし、いずれ支出しなければならないものであれば、今年の12月31日までに支払うことで節税につながるのであれば、検討してみてはいかがでしょうか?

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