夫の不倫が発覚して、一度はやり直そうと誓い合ったのに、夫はその後、彼女のことをあきらめきれないから離婚してほしいと言ってきました。シュウコさんは死を決意して、両親と娘に遺書を書くほど追い詰められていました。
前半:夫の不倫が発覚して…離婚調停で婚姻費用を求めても折り合わず事態は悪化
両親と娘に監視されて
死のうと家を出てさまよっていると、心配した両親と娘が警察に連絡、シュウコさん(44歳)は見つかってしまいます。
「それからは両親と娘が交代で私を見張っていました。仕事ももちろん休職するしかありませんでした。私は死ぬことすらできない。それが情けなかった」
そんなある日、彼女は体調の変化を覚えて病院に行きました。なんと妊娠していたのです。やり直そうと誓ったあの日、たった1回、夫と愛し合ったときの子です。
「この年齢で、しかもたった1回で妊娠するなんて……。客観的に見れば最悪のタイミングかもしれませんが、私はこれには何か意味があるのではないかと思ったんです。まったく悩みも迷いもせず、産むことを決めました」
それからすぐ、夫が離婚調停を申し立ててきました。彼女は夫が不倫をしていた証拠をにぎっています。でも夫は不貞行為を認めず、お腹の子も自分の子ではないと主張しているそうです。彼女も不貞行為は認めていないとか。
「夫が不倫を告白したとき、私とっさにスマホで録音したんです。証拠はあります」
シュウコさんは、夫の彼女に町で襲撃されたこともあるそうです。うしろからついてきた彼女に殴りかかられたのでした。シュウコさんはガードレールに叩きつけられ、救急車で搬送されました。彼女はそのまま逃げてしまったそうです。
「だから彼女に対しては不貞行為で慰謝料を請求、暴行で告訴することも考えています。私は死のうと思ったけど、子どもができたからにはどこまでも強く生きていかなければならない」
子どもと一緒に行きていく決意
お腹が大きくなるにつれ、切迫流産の恐れで2回入院、現在は糖尿病と高血圧にも悩まされています。仕事は続けられなくなったため、婚姻費用の請求を夫にしていますが、金額が折り合わず、現在は生活保護を受給しているそう。
「狭い町なので、夫や彼女とばったり会ったことがあります。夫は顔を背け、彼女はにらみ返してきました。そのたびに私の体の中で血が流れていく。一度ついた傷はなかなか治りません。でもあのふたりは、自分たちが私を傷つけたことさえわかっていない」
年があけたら、彼女はいつ出産してもおかしくない状況になります。夫はこうなってまで何を守りたいのでしょう。
「会社にはバレてないようですけど、ふたりとも仕事を失うのがいちばん怖いんでしょうね。大ごとになってふたりが会社から追放されればいいとも思ったけど、夫に収入がなくなったら慰謝料や養育費ももらえない。矛盾していますが、仕事は失ってほしくはないんです」
シュウコさんも弁護士をつけて、とことん闘うつもりでいます。もはや夫との修復は不可能かもしれませんが、せめて産まれてくる子どもの父親であることは認めさせたい。そして家庭を壊した責任を彼女とともにとってもらいたい。そう願っています。
個人的には不倫を否定も肯定もしない立場で、長年取材を続けてきました。どの立場に立つかによって、「不倫」の見方は変わります。ただ、シュウコさんのように何も非がないのに、一方的に夫に不倫をされ、精神的にも経済的にも追い込まれてしまうのを見ると、理不尽を感じざるを得ません。
「いくらお金をもらっても心は静まりません。不倫って、“心の殺人”だって誰かが言ってたけど、本当にそう思います。心からずっと血が流れ続けている。だけど夫も彼女も、それを償うどころか謝ろうともしない。こういうことがまかり通っていいんでしょうか」
シュウコさんの苦しさを想像するとせつなくなります。身も心もぼろぼろになりながら、それでも彼女は新しい命を生みだそうとしているのです。そしてその命が、彼女に生きる力をもたらすに違いありません。