画像は『Love Story / トップガン (初回“Love Story"盤)』より
東京ドームで開催された男性アイドルグループのライブに来ていた女性は、隣の席にいた女の動きに不審なものを感じていました。
ライブの終わり、アンコールの最中にもかかわらず席に座り込み、曲の途中で席を立って出口へ向かって行ってしまったのです。曲が終わったあと、座席の下に置いていたバッグの中を調べてみると、中に入れていたクレジットカードや商品券、現金がなくなっていました。
慌てて会場の外に出ると、先ほどまで隣にいた女、井上さおり(仮名、裁判当時33歳)を発見しました。すぐに呼び止めカバンの中を見せるように問いつめました。
はじめは拒否され押し問答をしていた二人でしたが、騒ぎを聞きつけた警備員が駆けつけました。別室に移動して警備員立ち会いのもと持ち物検査をしたところ、下着の中に隠しこまれた盗品がでてきたため警察に通報、窃盗罪での現行犯逮捕となりました。
「生活が苦しくてやってしまいました。盗むつもりでライブに行ったわけではありません。ライブの途中で腰が痛くなって座っていたら隣の人のバッグが目に入ってしまって、ついやってしまいました」
法廷ではこのように動機を話していました。彼女は高校卒業後、ホームセンターで勤務をしていましたが退職、その後は旅館で仲居の仕事に就きましたがそこも退職し、事件当時はパソコン入力のアルバイトと風俗店でのアルバイトを掛け持ちしながら一人暮らしをしていました。
パソコン入力のバイトでは月に5万円程度、風俗では月に15万円ほど、合わせて手取りで月に約20万円の収入を得ていたようです。
都内での一人暮らしで手取り20万円、贅沢ができるとも思えませんが犯罪に走らなければならないほど生活が苦しいとも思えません。
彼女の支出状況も見ていきましょう。
彼女が住んでいたのは都内のマンションで家賃は73000円、食費と光熱費は合わせて45000くらいだったそうです。
この時点ではまだ余裕がありそうに見えます。しかし彼女には毎月大きな支出をしなければならない彼女なりの事情がありました。
それは「ライブとグッズ」でした。
毎月、追いかけていた男性アイドルグループに5~6万円は使っていたようです。
20万円の収入で、推しているアイドルにこれだけつぎ込んでいれば生活も苦しくなるはずです。
「無駄遣いをしていたという自覚はあります。これからは自分の収入に見あった生活をします。ライブさえなければ生活に困りません。今後、ジャニーズに出費するのはもうやめます。ライブに行くのもグッズを買うのももうやめます」
法廷でヲタ卒宣言をした彼女ですが、果たして今まで生活費に困る状況になってまで応援していたアイドルから卒業できるものなのでしょうか。
応援しているアイドルにお金を使うのは楽しいものです。対象への思い入れが強ければ強いほどよりいっそう楽しいものですし、自分が困窮したとしてもお金を注ぎ込んでしまう気持ちはとてもよく理解できます。
だからといって犯罪に走るとなるとそれはまた別の話です。もしこの事件を彼女が応援していたNEWSのメンバーが知ったらどう思うでしょうか? 本当に好きでファンであるのならば、メンバーが悲しむようなことはしてはいけません。
初犯ということもあり、判決は執行猶予付きのものになりました。今後、彼女は実家に戻って家族の監督のもと生活をしていくそうです。
今までやっていた2つのアルバイトもやめ、「以前から興味があった」という医療関係の仕事に就くために就職活動もしていく、と言っていました。
実家暮らしになることですし、仕事さえ決まればまたライブに行くこともできるような気がします。個人的には、一度好きになって追いかけたアイドルからそうそうすんなり卒業できるとは思っていませんが…またNEWSを追いかけるかどうかは彼女次第です。
追いかけるにしても、節度を守っていけるか、それもまた彼女次第です。(取材・文◎鈴木孔明)
※タイトル画像は『Love Story / トップガン (初回“Love Story”盤)』より