読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、ドル建変動型個人年金を勧めるプランナーに疑心暗鬼になっている31歳の主婦。外国籍の夫を持ち将来帰国する可能性もある中で、教育費や保険、住宅購入についてどのように考えていけばいいのでしょうか。FPの飯田道子氏がお答えします。
老後資金のことを考えると背筋が凍る思いです。子どもの教育費に加えて、老後資金を貯めるためにはどうしたらいいでしょうか?
1年前からつみたてNISAで毎月満額積立て、将来のお金にと備えています。しかし、子どもの教育費のことを考えると、これで大丈夫なのか不安です。保険会社に相談したら、ドル建ての変動型個人年金を勧められましたが、本当に良いのかよくわかりません。当初iDeCoを検討しようと思っていたのですが、ライフプランナーさんから私には節税効果があまりなく変動型の個人年金の方が良いと言われました。勧められた商品は月々15000円程度、10年で払込が終わるものです。
また、夫が外国籍のため帰国のリスクがあります。永住ビザもまだないため、ローンは組めません。そのため賃貸に長く暮らすつもりでしたが、先ほどのプランナーさんに早めの住宅購入を勧められました。加えて、夫にもつみたてNISAを始めてもらおうと思っていると話したところ、「お金の備えは分散させたほうが良い、次回ご主人におすすめの保険商品持ってくる」と言われました。
実際のところどうなのでしょうか。いまいちプランナーさんが信用に足るのか判断がつきません。かといって、自分たちも知識があまりありませんので、専門の方のご意見をお聞きしたいです。よろしくお願いいたします。
<相談者プロフィール>
・女性、31歳、既婚(夫:29歳、会社員)
・子ども2人:2歳、0歳
・職業:会社員(育休中)
・居住形態:賃貸
・毎月の世帯の手取り金額:35万円(夫のみ ※妻は復職後、時短で月12万円程)
・年間の手取りボーナス額:業績次第で大きく変わるので未定
・毎月の世帯の支出目安:約27万円
【支出の内訳】
・住居費:8万円
・食費:5万円
・水道光熱費:1万円
・教育費:2万円
・保険料:0.45万円(県民共済のみ)
・通信費:1.5万円
・日用品:1万円
・車両費:なし
・お小遣い:5万円(夫3万円、妻2万円)
・その他:3万円
【資産状況】
・毎月の貯蓄額:定期5万円、つみたてNISA3.3万円
・現在の貯蓄総額:240万円
・現在の投資総額:38万円
・現在の負債総額:なし
飯田:子どもの教育費、および将来の老後資金をどのように貯めるべきか心配されている相談者様。保険会社のプランナーさんから提案されている内容も、しっくりきていない様子です。
ここで考えていただきたいのは、ご主人が外国籍であるということ。これを機に、日本の金融商品・日本での生活のみならず、海外の金融商品や生活も視野に入れたプランを考えていくことが大切です。
夫が外国籍だからこそ、海外の金融商品も含めて検討を
将来を見据えて、つみたてNISAをスタートさせているとのこと。積立期間20年の商品ですが、節税効果が期待できますので、良い決断であったと思います。
現在、保険会社からドル建て変動型個人年金を勧められているようですが、ここでポイントとなるのが、ご主人が外国籍であるということです。
たとえば生命保険ですが、日本に住む日本人の場合、海外で販売されている保険に加入することはできないのですが、ご主人は外国籍ですので相談者様が加入制限されている保険にも加入できる場合がほとんどです。もちろん、ご主人の国籍によって、すべての国の保険に加入できるのかどうかの確認は必要ですが、日本で販売されている保険だけでなく、諸外国の保険を含めての加入検討をお勧めします。
外貨建ての保険の場合、為替変動リスクは伴いますが、日本をベースに考えると、どの国の保険に加入しても同じこと。ただ、ご主人の母国の保険なら、将来、その国の通貨を利用する可能性は高くなりますので、必然と他の国の通貨よりもリスクを抑えることが可能になりますよ。
老後資金よりも教育資金の準備を優先
ドル建て変動型年金は、利回りだけを考えていくと選択肢の一つと言えますが、相談者様の場合、老後資金を貯めるというよりも、まずは子どもの教育費の準備をすることが優先です。
もちろん個人の考え、資産状況にもよりますが、お金を貯める順番としては、教育費および住宅購入資金をはじめに。子どもの教育費の支出が落ち着いてきてから老後資金の準備に取り掛かる方が、効率よくお金が循環していきます。
現在、日本で働き日本円で収入を得ているのなら、年金型の保険よりも、日本で販売されている学資保険を検討することも考えてみてください。その際には海外の金融商品とも比較し、より条件の良い運用先を選んでいきましょう。
国際結婚に多い「急遽帰国の事態」、回避するために話し合いを
相談者様の家庭で最も大切なことは、今後どのように生活していくのかを決めていくことです。
ご主人は日本の永住権を未取得とのことですし、これからどうするのか未定なことが多いかと思います。まずは子供の教育や双方のご両親の介護などを考えて、どこでどのように暮らすのかを夫婦で話し合うことから始めてください。
実のところ、国際結婚されている多くのご夫婦が、急遽、夫もしくは妻の国へ帰国せざるを得ないケースを相談現場で目にしてきました。このようなご夫婦の場合の多くが、介護など、あらかじめ想定できたことを後回しにしてきた結果、急な対応を迫られることになっています。
相談者様はまだ若く、お子さんもまだ幼いので、プランは描きやすいのではないでしょうか? キャリアプランとともに、検討してみてください。
永住権のない外国籍の夫、住宅ローンは組める?
日本に暮す外国人の多くの方が、賃貸派です。日本人からすると、「もったいない」という観点からマイホーム購入を勧める人が多く見受けられますが、ライフスタイルは人それぞれです。日本で暮らしていける、生きたいと思うのなら、日本でマイホームの購入を検討しても良いでしょう。
また、必ずしも永住権がないからといって、外国人の夫が住宅ローンを借りられないわけではありません。若干、金利は高くなってしまいますが、何社か対応していますし、相談者様との共有名義にする等、方法はいくつかありますよ。
夫の死亡保障には加入を、ただし保険のみで分散するのはNG
家計の内訳を見ていくと、無駄遣いすることなく堅実な様子がうかがえます。
そして、ここで気になるのが保険料のこと。おそらく保障を厚くしたいとプランナーさんへアクセスしたのかと思いますが、万一に備えて、夫の死亡保障はつけておくと安心ですね。
死亡保障の目安は、万一のことが起こった時に家族が困らないためのものです。今後、学資保険に加入するのなら、その分の金額を差し引いて保障額を決めていくと良いでしょう。相談者様は働いていますし、学資保険に加入済みとして考えていくと、大まかな目安としては、1500万円~2000万円くらいでOKです。もちろん、定期的な見直しも行ってくださいね。
これから教育費は、どんどん増えていきます。進学するタイミングをずらすことはできませんので、できるだけ元本保証の金融商品で運用することをお勧めします。
プランナーの方がおっしゃるように分散させて運用することは大切ですが、保険と貯蓄は別です。保険のみで分散するのは危険ですので注意してください。