プルミエ・クリュ深田さん 長崎県内初「料理マスターズ」 地産地消「食を守っていく」

「日本の財産を守っていければ」と話す深田さん=長崎市、プルミエ・クリュ

 長崎市鍛冶屋町のフランス料理店「1er cru(プルミエ・クリュ)」のシェフ、深田伸治さん(44)が、地産地消や食文化の発展に貢献した料理人の功績をたたえる農林水産省料理人顕彰制度「料理マスターズ」のブロンズ賞を受賞した。県内では初めて。深田さんは「本当の食材の魅力を伝える人を育てていきたい」と後進の育成にも力を入れたい考えだ。
 2006年に移転オープンした店の客席は8席ほど。全席禁煙。予約制で1万5千円(税、サービス料別)のコースのみだ。営業中は店の鍵を閉めるなど、客に非日常を楽しんでもらえる空間を演出する。料理から客席でのサービスまで1人で担当。長崎の野菜や魚介類、食肉などを積極的に取り入れた料理を、目にも鮮やかに盛り付けている。
 深田さんがよく使う食材の一つが壱岐牛だ。使い始めたころは、品質や生産量が安定していなかったり、味にばらつきがあったりした。そこで、生産者と直接話し合って餌を工夫してもらった。それを生産者間で共有してもらったりしながら品質と供給量の安定を確保した。
 また、長崎の食材だけを使った料理教室も開催。こうした取り組みが受賞につながった。
 深田さんは神戸市出身。工業高校を卒業し建築関係の職場に就職したが、1995年に阪神淡路大震災で勤務先がつぶれ、形あるものが壊れるむなしさを感じた。アルバイトで料理の楽しさを知り「皿の上で自分の思いを表現できたら」とホテルで働き始めた。
 長崎との縁は、長崎市内の系列のホテルへの転勤がきっかけ。「自分の店を持ちたい」と退職し、神戸のフランス料理店で約2年修業後、長崎に戻った。2002年6月、27歳の時に長崎市寺町に最初の店をオープン。自然豊かで自分の時間も取りながら仕事ができる環境で料理を作りたいという夢の一歩を踏み出した。
 深田さんは、マスターズ受賞者との情報交換などを通じ、地元の食材をPRしたい考え。「日本の財産である食を守っていければ」と抱負を語った。

 ■料理マスターズ
2010年に農水省が始めた。5年以上にわたり活動を続け功績のあった料理人らを選ぶ。まず「ブロンズ」を授与し、活動を続けた人には「シルバー」や「ゴールド」が贈られる。12日に授与式が東京都内である。今回の受賞者を含め、国内のマスターズ受賞者は73人。

深田さんが作ったコースに含まれる前菜

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