ママ考える改憲問題 弁護士招き「街頭カフェ」 緊急事態条項 危険性を指摘

 安倍政権が憲法改正議論の最優先に掲げる「緊急事態条項」について知ろうと、子育て中の母親らが4日、弁護士や憲法学者を招いた「街頭憲法カフェ」を横浜市中区のJR桜木町駅前で開いた。安倍首相は同日、憲法改正について7月の参院選で民意を問う考えを表明。同条項に詳しい弁護士は「政権の本当の目的はどこにあるのかを見極め、中身を知って判断しよう」と呼び掛けた。

 講師としてマイクを握ったのは東日本大震災発生時に法的支援を行った弁護士の小口幸人さん(37)と、憲法とフランス法を専門とする聖学院大教授の石川裕一郎さん(48)。

 小口さんは「自民党改憲草案の緊急事態条項は『何が緊急事態なのか』がきちんと書かれておらず、定義が非常にあいまい。安倍首相の一存で決められ、都合良く使われる危険性がある」と指摘した。

 自民党は大規模災害に対応するため条項が必要と説くが、被災地自治体の弁護士会など17会は反対声明を出している。小口さんは「既存の法律で十分対処でき、条項新設は不要。情報が一番伝わりにくい政府に権限だけを集めてしまえば、現場は指示待ちになり対応はかえって遅れる」。さらに原発事故などが起きた場合、「政府が情報統制を行えば健康や生命に関する情報は国民に伝わらない」と危機感を示した。

 石川さんは、パリ同時多発テロ後に非常事態を宣言したフランスで捜査令状なしに家宅捜索ができるなど国家に強制権が与えられたことを踏まえ、「基本的人権が守られない危険性がある」と訴えた。「フランスのメディアは身柄拘束は2700件以上あったが、テロ関連は2件だったと報道している。不当な身柄拘束といった人権侵害が簡単に行われてしまう」とし、政府への権限集中は「権力の暴走を生む」と強調した。

 憲法カフェを企画したメンバーの一人、鈴木法子さん(46)は「本当に国民のための改憲なのか。まずは知って、おかしいと思ったら選挙で反対の意思を示したい」と話した。

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