発生13年 川崎・宮前トンネル女性刺殺 19日に初公判

刺殺事件があったトンネル内。現場には花束が供えられている=川崎市宮前区(2018年8月)

 川崎市宮前区のトンネルで2006年9月、帰宅途中の女性が刺殺された事件で、殺人の罪に問われた被告の男(39)の裁判員裁判が19日、横浜地裁(景山太郎裁判長)で始まる。検察側と弁護側で事実関係に大きな争いはなく、量刑が焦点になる見通しだ。逮捕まで11年を要した事件の真相や動機について、被告が何を語るのかも注目される。

 起訴状などによると、被告は06年9月23日未明、同区のJR貨物梶ケ谷貨物ターミナル駅下のトンネル内歩道で、近くに住む女性=当時(27)=の右胸や腹を刃物で刺して殺害した、とされる。

 被告は約半年後の07年4月に、同区の路上で別の女性を襲ったとして殺人未遂容疑で逮捕され、後に懲役10年の刑が確定。服役中の16年1月、未解決だった女性刺殺事件への関与をほのめかすはがきを県警に送付し、刑期満了が近づいた17年10月に殺人容疑で逮捕された。

 公判で検察側は、被告が夜道を一人で歩く女性を短期間のうちに立て続けに襲った点を重視、無差別の連続通り魔事件として被告の凶悪性を説明し、厳罰を求める模様だ。

 弁護側は、起訴前と起訴後の2回にわたって行われた精神鑑定で、被告に人格障害の兆候があると判定された点に着目、こうした障害が被告の行動に影響を与えた可能性があるとして、量刑を考慮するよう求めるとみられる。

 被告は昨年5月以降、神奈川新聞社の接見取材に定期的に応じ、事件の様子を語ってきた。事件当日は車で帰宅途中に、事件現場近くの交差点を渡る女性を見掛けたとし、所持していた包丁を手に車を降りて追い掛け、トンネル内で「とっさに腹を刺してしまった」と振り返った。

 背景として仕事上のストレスを挙げ、「当時は尋常じゃないほどいらいらしていた」とも説明。ただ、偶然目にした女性を追い掛けた理由やなぜ刺してしまったのかについては明確な返答がなかった。遺族への謝罪の気持ちはあるとしながらも、「自らの口で直接、公判で遺族に向けて話したい」とも述べた。

 公判は全6回を予定。論告求刑公判は12月2日、判決は同13日に言い渡される見込み。

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