「平和モニュメント」撤去へ 老朽化で安全性に問題

撤去が決まった平和モニュメント=横須賀の中央公園

 平和や核兵器廃絶を訴えるシンボルとして横須賀市の中央公園(同市深田台)に設置されている「平和モニュメント」が、来年1月から撤去される。定期的なメンテナンスがなされず、老朽化により安全性に問題が生じたため、管理者の市が中央公園の改装に合わせて撤去を決めた。新たなモニュメントは、恒久平和を訴えるコンセプトを維持しつつ2020年度中にリニューアルするという。

 平和モニュメントは高さ約20メートルのステンレス製。折れ曲がった塔と、それを支えるような塔の二つで構成される。1989年に市が「核兵器廃絶・平和都市」を宣言したのを契機に、その意思を広く内外に示そうと92年に設置された。

 設計者は、横須賀市出身の彫刻家で当時武蔵野美大教授を務めていた最上寿之さん(故人)。91年にあった彫刻家10人による設計コンペで選ばれた。「核兵器のない天上界(宇宙)と、われわれの住む地上の交流、対話のできる発信基地」を表しているという。

 事業費は1億4100万円で、うち約335万円は市民の寄付で賄われた。92年10月の完成式典以後は、2006年までは終戦記念日や原爆の日などに付設された鐘を鳴らすなどし、平和を希求する役目を担ってきている。

 市公園管理課によると、安全性に問題があると分かったのは17年の点検時。内部の鉄骨が腐食していたり、水がたまったりしており、改修には多額のコストがかかることなどから撤去を決めた。内部のメンテナンスを定期的に行っていなかったという。

 市議会9月定例会で、撤去費や新たなモニュメントの設置工事費など1億3千万円が盛り込まれた19年度一般会計補正予算が可決されたものの、審査した予算決算常任委員会では各委員から意見が続出。「平和のモニュメントなのだから、長くそこにあるべき」「通常の点検が足りなかったのではないか」といった指摘に、市側は「維持管理の対応が遅れてしまった」と釈明した。

 市公園建設課は、新たなモニュメントは恒久平和を訴えるコンセプトを維持し、光を上空に向けて照射するなどの演出ができるものを整備する、としている。コンペを実施し、委託事業者を12月にも決定する予定。

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