【台風19号】神奈川の土砂災害、警戒区域で崩落7割

土砂が崩れた現場=相模原市緑区牧野

 台風19号で多発した神奈川県内の土砂災害(94件)のうち、約7割は土砂災害警戒区域の急傾斜地や渓流などで崩落が起きていたことが19日、県の集計で分かった。人的被害を伴った現場は、いずれも警戒区域かその隣接地だった。専門家は「身の回りの崖などに日頃から目を配り、不安を感じた時は早めに避難することが欠かせない」と指摘している。

 県砂防海岸課によると、94件は建物が巻き込まれたり、規模が大きかったりした主な被災現場を取りまとめた18日時点の件数。これらのうち、警戒区域で土砂の崩落などが起きたケースは65件あった。

 区域外だった29件については主に、住宅が立地していなかったり、崖の高さや勾配が基準に満たなかったりして、指定の対象外だった現場という。

 相模原市緑区牧野で女性が死亡、娘が重傷を負うなどした崖崩れの現場は、居住していた住まいも含め警戒区域に指定されていた。箱根町強羅で崩落した土砂が流れ込み、女性従業員が負傷した旅館も同様に、警戒区域だった。

 一方、相模原市緑区牧野で住宅が押し流され、夫婦が死亡した現場では、崩落した上部の斜面は傾斜度が緩く指定の対象外だった。ただ、その両側や下側の斜面などは警戒区域となっている。

 災害時の避難に詳しい東京女子大の広瀬弘忠名誉教授(災害心理学)は「警戒区域の指定状況だけで危険か安全かは区別できず、潜在的に危ない場所はほかにもある。気象災害が激化している現状を踏まえれば、怖いと直感した時に避難することが重要だ」と身を守る上での要点を強調する。県も「崖崩れや土石流などは自然現象のため、警戒区域の指定エリア外で起きる可能性もある」として注意を促している。

 県によると、市町村別の発生件数は相模原市の37件が最多。箱根町24件、山北町10件、南足柄市6件と大雨特別警報が出された県西部に目立つ。また、崖沿いに宅地が多い横浜市で7件、横須賀市でも2件あり、発生地域は13市町に及んでいる。

 形態別では、崖崩れが61件と3分の2を占め、土石流が30件、地すべりは3件。これらにより相模原市緑区で計3人が死亡、同区と箱根町で計3人が負傷した。9戸が全壊となったほか、半壊3戸、一部損壊5戸がこれまでに確認されている。

 18日時点の国土交通省の集計によると、台風19号による土砂災害は20都県で計953件。一つの台風の被害としては、記録のある1982年以降で最多となっており、県内は、宮城、福島、岩手に次いで4番目に多い。

◆土砂災害警戒区域 急傾斜地の崩壊、土石流、地すべりによって住民らの命に危険が及ぶ恐れのある区域。土砂災害防止法に基づき都道府県が指定する。市町村が作成するハザードマップなどを通じた周知や警戒避難体制の整備が行われるイエローゾーンと、より危険性が高く建築物の構造規制などが加わるレッドゾーンがある。県内のイエローゾーンは10月末現在で1万467カ所。レッドゾーンはこのうち1768カ所を指定済みで、今後さらに増える見通し。

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